» 華扇会(かせんかい)|ふじのくに ささえるチカラ

華扇会(かせんかい)

動きのある和紙人形で伝える江戸の風物
磨かれた現代の技法が地元の民俗文化を再現


かせんかい

華扇会


田畑華扇 華扇会 二代目家元


取材日:2012.1.27

東海道の宿場、江戸の風物…細かなディテールで描写し、現代人に伝える

 湖西市にある歴史文化施設「おんやど白須賀」には、昔の東海道の汐見坂風景を再現した全長7mものジオラマで和紙人形が展示されている。浜松市の浜北文化センターには遠州大念仏の回向風景を現した和紙人形がある。これらはいずれも浜松の創作和紙人形の会「華扇会」の手によるものだ。作り出されたリアルな風景が、見る人を江戸時代にいざなう。
 初代田畑華扇氏(1991年没)が1974年に設立した華扇会。現在は初代の娘の田畑華扇氏が2代目家元を務めている。華扇会が作る和紙人形の特徴は顔に目鼻を描き込まないこと。目鼻が表現されていないことが逆に見る人それぞれの想像力を膨らませる。構成は江戸時代を考証した資料をたんねんに調査して、当時の文化・風俗・風習をできるだけ正確に描写する。作品には美術的価値に加えて資料的価値も生まれるため、地元の民俗文化を伝えたい各地・各種の文化施設が展示するようになった。
 華扇会の作品が注目されるのは、シチュエーションの面白さと凝りに凝ったディテール表現にある。例えば、宿場町のジオラマでは突然吹いた風がもたらす、町行く人の動きが現される。町娘は着物の裾を押さえ、旅人は笠が飛ばないように手でつかむ。木賃宿の風景では、おかみが横着して草履も脱がずにあがりかまちに乗りあがって客の応対をする。着物や建物だけでない人間の動きのリアリティが作品に盛り込まれているのだ。女性のみならず男性のファンが多いのもうなずける。
 東海道400年祭、浜名湖花博などのイベントでも地元静岡をはじめとした日本の昔の姿を表現してきた。動きがあってわかりやすいと評判を呼び、ウイーン、イタリアなど海外でも展示会が催された。華扇会の活躍の場は広がっている。





以下、インタビュー

1. 「動き」を表現する

日常あったはずの風景をイメージして
ハプニングやなにげない人の行動も表現

 私達の作品は、見る人が「これは華扇会の人形」とすぐに分かるようです。それだけ特徴があると自負しています。目鼻を描き込まないのは大きな特徴のひとつですが、それ以外に大切にしていることは「動き」を取り入れることです。昔だって日常はいろいろなことが起きているはずです。風も吹けば雨も降る、鼻緒が切れたり、寝相の悪い子どもがいたりする。そうした風景を表現することが自然で親しみ易いのではないでしょうか。
 私は江戸の生活文化が大好きなので、江戸の風景を作品にすることが多いですが、そのためにいろいろな資料を調べます。深川の江戸資料館に行ったり、浮世絵や文献を見たり。特にいい資料は古典落語ですね。シーンが楽しいですし、言葉の端々に当時のなにげない所作が盛り込まれていますから。
 題材となるシーンも工夫します。お祭りの1ヵ月前の準備風景とか、お祭り当日でも出し物を見る観客を含めて面白い作品になるように考えます。

2. 展示する場

地域の文化も表現し、地元の施設で常設展示

 3年に一回くらい華扇会の定期会を開いて作品を発表しますが、その準備は1年くらいかかります。その他ではイベントでも発表します。東海道400年祭では東海道五十三次の静岡県内の宿場を題材にしました。本当は全22宿やりたかったのですが、3年かけて12宿がやっとでした。蒲原宿では大名行列を一瞬の突風が襲い、隊列があたふたする風景を表現したりしました。各種メディアに取り上げてもらううちに、華扇会の作品は県内の文化施設に常設展示されるようになっています。




3. 伝えていきたいこと

たくましく、したたかだった江戸庶民
現代の人にこそ分かってほしい日本の心

 皆が集まって制作するのは週に3時間ほどですが、皆時間を忘れるほど没頭します。そして細かな部分も妥協しません。たった数センチの着物の重ね襟にどの和紙を使おうかとずっと悩んだりします。その日に出来なければ各自が持ち帰って制作を続けます。私も指導しますが、皆さん本当に熱心なんですよ。ただ、若い人があまりいないのです。若い人が来たら大歓迎しますよ。
 今は江戸の長屋風景を題材に作品を作ろうと資料を調べていますが、あの時代の庶民はたくましくしたたかです。ほとんどが狭い長屋住まいですから、必要最低限のものしか持たない。冬になれば火鉢、コタツは損料屋(レンタル業)から借りてくる仕組みがあって無駄がない。豊かさはなくとも生活を工夫して楽しく暮らしていたんです。日本人気質が薄らぎ気持がすさみがちな現代にこそ、それを伝えていきたい。そういう心を込めて華扇会の人形を作っていきたいですね。

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華扇会

浜松市北区三方原町266-1 TEL 053-436-3281


華扇会(かせんかい)

- 略歴 -

1974初代田畑華扇が華扇会を設立
1991初代の急逝にともない、現田畑華扇氏が2代目家元となる
1999ウィーン人形展開催
2001東海道400年祭に参加。優秀賞受賞
2004浜名湖花博にて2ヵ所のパビリオンに出品
2005イタリア人形展開催
2011静岡ホビースクエアにて「おもしろ江戸百景」を開催


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