» 三米アトリエ(さんよね・あとりえ)|ふじのくに ささえるチカラ

三米アトリエ(さんよね・あとりえ)

昭和レトロな建物が街のにぎわいを作りだす
衣食住の文化を通して人と人をつなげる


さんよね・あとりえ

三米アトリエ


三浦 京子


取材日:2013/3/7

みそ作り、だし教室、コンサート…空間を生かした催事がもりだくさん

 浜松市中区の肴町(さかなまち)。古くからの歴史を感じさせる味わい深い町名だ。実はこの町の昔の空気をそのまま封じ込めたような空間がある。それが三米(さんよね)商店。今は三米アトリエと名付けられて町の名物スポットに育ち始めた場所だ。
 海産物問屋を営む三米商店の建物は昭和31年の建造。災害に強く、かつモダンな銀行の建物を模したという。実際、壁は厚く頑丈で、外観もたしかに銀行のような風格がある。時代の流れで店は移転したものの、一族は隣の店舗で乾物・海産物の小売業を継続して営んでいる。この店に嫁いだ三浦京子さんによって、昭和レトロなこの建物に新たな活躍の場が与えられることになった。
 きっかけは2011年、静岡文化芸術大学の学生と若手建築家のグループに、カフェ&インテリアショップとしてこの場所を1カ月貸し出し、運営を手伝ったこと。三浦さんは古いものを見る若者の視点と感性に刺激を受けた。この建物を眠らせておくのはもったいないと思い立ち、動き出す。以前から食の分野に関心が高かった三浦さんは衣食住の生活文化に軸足を置いた。だしの取り方を教える「だし教室」をかわきりに、街の活性化イベントである「まちゼミ」にも積極的に参加し、みそ作り講座を開いてくれる人、同じように小スペースを活用してイベントを開催している人などと知り合った。そのつながりから三米アトリエでワークショップや手作り品の小規模マーケットを開くようになった。また、店舗空間の高い天井が音響効果をもたらすことに目をつけ、浜松交響楽団の団員によるコンサートも開いた。その時はアトリエの外まで人が集まる盛況ぶりだった。
 味わい深い建物にはもともと人を引き付ける潜在的な力があった。その場所で文化的な催しをすることで人が集まり、交流が生まれる。地域に眠っていた文化財を地域の人が見事に花開かせたといえるだろう。


以下、インタビュー

1.  建物の力

気づかなかった文化財的な価値を認識
若者も年輩の人も引き寄せる空間

 この建物の魅力を意識するようになったのは、若い人の反応を見てからです。普段生活の場として使っている人間だと、そういうことに気づきにくいのかもしれませんね。カフェ&インテリアショップとして1カ月間、貸し出したとき、古い建具、照明、小物入れなど、何を見ても若者たちは目を輝かせていて、その姿がとても新鮮だったんです。それから、食に関するワークショップを始めると、通りがかりの人がよく覗いていくことにも気づきました。昭和レトロなこの空間が、若者にも年配の人にも好まれていることが分かります。
 考えて見ると自分自身、大好きな祖母の家が取り壊されたとき、さみしい思いをしたことを思い出しました。失ってしまったものは取り返せません。古いものについての見方が変わり、文化財ともいえるこの建物をみんなにとって必要なものとして残したいと思うようになったんです。

2. 衣食住の生活文化

介護体験を経てあらためて食育の大切さを知る

 失われつつあるのは古民家だけではなく、最近は食育もあまり重要視されなくなり、危機感を持っています。数年前から親族の介護に接してきたのですが、病院で介護士の方や看護師の方々と会話するうち、「食生活をもっと大切にしなければならない」との思いが強まりました。皆さんにちゃんと説明できるよう、食育インストラクターの資格も取っています。
 三米アトリエでは私が講師になって、だし教室を開いています。そのほか講師を招いて、手作りみそ講座、玄米講座もあり、定員オーバーになるほど人気になっていてうれしいかぎりです。

3. 街を元気に

この場所で人がつながっていくのがうれしい
発信力が高まり、遠くから街に人が来るように

 三米アトリエでは、音楽コンサートをしたり、映画のポスター展をやったり、手作り品の小さなマーケットもやるようになりました。ここに訪れた人や友人が新たに人を紹介してくれて、つながりが広がっています。インターネットで情報発信を始めたら、発信力のあるブロガーの方とつながって、ちょっと離れた地域の人まで来てくれるようになりました。
 思いのある人がつながって行動すれば、一人ではできないこともできるようになります。ここは会議室などとは違って、皆が丸く囲んで話し合いますから、親近感が強まる効果もあるようです。何回か交流するうちに他の講座を手伝ってくれたりもします。
 現代は世代を超えた交流はあまりないですが、地域とつながりたいという若者も、自分の地域に人を呼び込みたいという住民もいます。老若男女が興味を持つ三米アトリエの空間を生かして、人と人をつなげる役になれたらいいなと思っています。


三米アトリエ

静岡県浜松市中区肴町314-23 <連絡先> TEL 053-452-1713(丸喜屋商店)

2013/3/7

三米アトリエ(さんよね・あとりえ)

- 略 歴 -

2011三米アトリエにて、静岡文化芸術大の学生と若手建築家グループが企画・運営するカフェ&インテリアショップを開催。浜松アートルネッサンスで市民ギャラリーとして開放。「だし教室」を開始
2012「おにぎり・スープCafe」開催。「手づくりみそ講座」(加藤醤油)を開始。静岡文芸大有志による「ブレンド・ブラインド・カフェ」開催。浜松交響楽団「七夕コンサート」開催。クリスマスリースワークショップ開催など


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