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石部地区棚田保全推進委員会(いしぶちくたなだほぜんすいしんいいんかい)

棚田の保全から地域の文化を活性化
都会と農村が交流する田んぼのイベント


いしぶちくたなだほぜんすいしんいいんかい

石部地区棚田保全推進委員会


会長 高橋 周蔵


取材日:2013/05/28

先祖が滅私の心で作った松崎町の棚田を後世につなぐ

 松崎町中心部から伊豆半島を南下したところにある石部地区。谷あいの集落を上っていくと石積みの棚田が現れる。広さ4.2h、棚田からは富士山や南アルプス、駿河湾が見える風光明媚な場所だ。この棚田を守っているのが石部地区棚田保全推進委員会で、会長の高橋周蔵さんは立ち上げ時から旗振り役を務めている。
 かつて棚田はほとんど放棄された状態にあり、荒れ野と化していた。高度成長期に道路が整備され、半農半漁で暮らしていた地域の人々は観光業で潤う一方、手間がかかる棚田での稲作は衰退してしまった。その後、バブル経済の崩壊によって観光業もふるわなくなった。過疎化、高齢化に悩む地区の将来を考えた末、棚田を核にした地域振興策に思い至った。国庫補助事業である「ふるさと水と土ふれあい事業」の制度を利用して棚田の整備に動き出した。
 江戸時代に山津波の被害にあった石部の棚田は、当時の人々によって復元されたという経緯がある。20年間の年貢が免除されるほどの壊滅的な大被害。先人たちは子孫につなぐことを考えて、目先の収穫より棚田を根本から作り直すことに力を注いだ。現代の棚田復元においても、滅私の心で奉仕した先人たちの精神が生きていた。地域が一丸となって、測量すら困難な荒地の草刈りから始め、作業小屋、水車小屋の設置、棚田オーナー制度の導入、交流イベントの実施と一歩一歩進めていった。棚田で採れた米から、焼酎やうどん、まんじゅうなど2次産品を作りだし、田植え祭、収穫祭などで都会から来る棚田オーナーと交流など、観光産業も次第に元気づいている。
 棚田は機械化農業が難しいゆえに、手作業の昔の技術に頼らざるを得ない。それが今や伝統的な文化として価値を輝かせる。のどかな作業風景と助け合う結(ゆい)の心が都会から来る人を癒す。見た目の形にとどまらない文化遺産としての棚田がここにある。


以下、インタビュー

1. よみがえった棚田

大災害から復旧させた先祖の偉業をたたえる
経済的に豊かでなくとも幸せな農村の姿に

 江戸時代の山津波については口伝があり、実際棚田には名残の大きな石が残っています。先人たちが自分の利益を考えないで長い年月をかけて復旧させたことには頭が下がります。自分たちも半端な気持ちではできません。手を付けたときの棚田は荒れ野になっていましたが、みんな滅私の精神で力を合わせて整備しました。地元地権者の方々も無償で田を使うことを了解してくれています。
 スローガンとしてかかげているのは「子どもに夢を、老人に生きがいを」ということです。私の脳裏にあるのは、昔の農村で家族が笑いながら歩いている姿を映した1枚の写真です。決して経済的に豊かではないのにとてもうれしそうな笑顔をしていて、見る側も幸せになります。この地区がそういう幸せな場所になることが願いです。だからこの棚田一帯を「赤根田村・百笑の里(あかねだむら・ひゃくしょうのさと)」と名付けました。赤根田は棚田のある場所の名前です。

2. 地域の力に

農から2次、3次産業へと展開し、地域を活性化

 棚田は大きな農業機械を入れられないので生産効率が悪く、棚田の収穫物による収入だけで棚田を維持していくのは困難です。収穫物から加工食品を作ったり、観光資源として観光客を呼び込んだりすることで棚田を核に地域全体を活性化させようと考えています。
 富士常葉大学や地元高校生、小学生のボランティア、そして一社一村しずおか運動で協働する企業など、棚田に関わる人は増えています。2013年から「いしび隊」という棚田の守り人の一般募集も開始しました。

3. イベント

田植え祭、収穫祭、コンサートなどで人を呼ぶ
家族的ふれ合いで他地域の人々と交流

 棚田オーナーは首都圏の人が多いですね。ふるさとを持たない都会の人達のふるさとのような存在になってくれればと思って、地区住民は家族的なつき合いで接しています。だからリピーター率も高いです。田植え祭、収穫祭ともなれば500-700人の人が訪れます。子どもも多く来て棚田はにぎわいます。
 かつてホタルが乱舞していたこの一帯で、ふたたびホタルを増やそうと試みています。棚田の水面に映るホタルの光は格別に美しいです。あぜ道にろうそくを並べてライトアップする「石部の灯り」というイベントも好評です。棚田にステージを作ってコンサートも開催しました。
 メンバーは高齢化していて、この活動をずっと存続していくために、棚田保全の認識を共有してくれる人を増やしたいと思っています。そのためにも、棚田という場所を生かしたイベントで人を集め、棚田の魅力を伝えていきます。


石部赤根田村・百笑の里

賀茂郡松崎町石部 <連絡先> 0558-45-0456(高橋)


石部地区棚田保全推進委員会(いしぶちくたなだほぜんすいしんいいんかい)

- 略 歴 -

1999静岡県棚田等十選に認定。棚田復田(4.2ha)
2000「ふるさと水と土ふれあい事業」として農道、水車小屋、休憩施設など整備。HP「赤根田村百笑の里」開設
2002棚田オーナー制度開始(50区画)。石部赤根田村・百笑の里開村
2003静岡県都市景観賞(静岡県)
2005第1回全国案山子コンテスト。第1回全国棚田学会賞(棚田学会)
2006黒米焼酎「百笑一喜」販売。「豊かなむらづくり」農林水産大臣賞(農林水産省)
2007一社一村しずおか運動「富士錦酒造㈱・㈱平喜・松崎小売酒販組合」認定。一社一村しずおか運動「富士常葉大学環境防災学部」認定。第2回全国案山子コンテスト
2008一社一村しずおか運動「居酒屋賤機はん兵衛」認定。赤米焼酎「百笑一喜」販売
2009棚田オーナー制度(100区画)。田舎で働きたい制度創設
2010HPリニューアル「石部棚田へ行こうよ!」。 第16回全国棚田(千枚田)サミット開催。第3回全国案山子コンテスト。棚田百笑くらぶ活動開始
2011地域おこし協力隊制度導入。一社一村しずおか運動「居酒屋あさ八」「(株)東海建設コンサルタント」認定
2012棚田でマルシェ開催。 石部の灯り開催


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