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雄踏歌舞伎保存会「万人講」(ゆうとうかぶきほぞんかい・まんにんこう)

空白期間を越えて復活した農村歌舞伎
地元の熱意が郷土芸能を未来につなぐ


ゆうとうかぶきほぞんかい・まんにんこう

雄踏歌舞伎保存会「万人講」


会長 中村 徳久


取材日:2013/05/21

いつも満席となる公演は出演市民の晴れの舞台

 毎年1月第3週に、浜松市西区雄踏町で定期公演が開かれる雄踏歌舞伎。2013年で開催回数24回を数える実績があるが、実際の歴史はそれよりはるかに長い。江戸時代にさかのぼる農村の伝統芸能なのだ。戦後いったん途絶えたが、雄踏歌舞伎保存会「万人講」によって復活されたという経緯がある。現在の2代目会長中村徳久さんも万人講の立ち上げから関わっている。
 戦前まで雄踏町には喜楽座という芝居小屋があり、雄踏歌舞伎はそこで上演されていた。戦時中に一度中断し、戦後一時復活したものの、喜楽座は混乱期を乗り切れずに閉鎖となり、1952年を最後に途絶えることになった。しかし、地元には復活願望が根強かった。1989年に雄踏文化センターを設立する計画がきっかけとなり、地元の有志が雄踏歌舞伎を上演できる施設にして復活させようと、保存会である万人講が立ち上がった。そして翌1990年、雄踏歌舞伎は落成した雄踏文化センターで38年ぶりに見事に復活した。
 いったん途絶えていたということもあり、長く続かないのではという懸念もあったが、600人を収容できる雄踏文化センター大ホールはいつも満席となり、おひねりも飛ぶ晴れの舞台となっている。地元の人々の歌舞伎に対する愛着の強さはもちろんあるが、練習や準備、裏方まで万人講の人々の努力なくしてはここまで盛況は続かない。毎年9月に演目を決め、人集めをし、練習場所をおさえる。衣装や道具の手配もする。そればかりでなく、理解を深めるための講座を開いたり、能や他地域の郷土芸能と連携して関心を高める工夫をしたりしている。
 万人講は老若男女誰でも参加できるため、子どもたちの参加にも熱心だ。雄踏歌舞伎はその長い歴史に今も新しい歴史を積み上げている。


以下、インタビュー

1. 地元の熱意

文化センターの設立が復活のきっかけに
途絶えていた芸能を38年ぶりによみがえらせる

 雄踏歌舞伎の復活は地元の人の願望でした。それには歌舞伎を上演できる施設がどうしても必要だったのです。1989年に雄踏町(現浜松市西区雄踏町)で文化センターを設立する計画が持ち上がり、雄踏歌舞伎保存会「万人講」を立ち上げ、文化センターで上演できるよう、設計に要望を出すとともに、地元住民が舞台に立つための準備を進めたのです。
 1952年を最後に途絶えていたのですが、昭和初期に亡くなった地元の役者、坂東國四郎(本名:中村留次郎)が所蔵していた台本も残っており、豊橋市の歌舞伎役者中村升十郎師匠の指導を得て復活させることができました。38年ぶりの復活でした。その後、毎年定期公演をしていますが、毎回満席となる人気です。
 1995年には創作歌舞伎「梅薫宇布見之曙(うめかおるうぶみのあけぼの)」も作りました。地元の国指定重要文化財「中村家」で生まれた徳川家康の第2子「於義丸(後の結城秀康)」にまつわる話を題材にして、地元ならではの演目にしています。

2. 継承

大人も子どもも集中した練習で本番に臨む

 誰でも参加できるのが万人講ですから、大人や学生、子どもも舞台に立ちます。毎年9月に外題を決め、演者を集めます。10月に台本を配り、11月に読み合わせし、12月から立ち稽古というスケジュールです。短期集中型にすることで、人を集めやすく集中力も高まります。
 夏休みには4日間、子ども歌舞伎教室を開いています。外題を勉強するほか、メイクや衣装合わせについても体験してもらっています。この中から1月の定期公演の出演につながる子どももいます。

3. 広がり

歴史を学び、歌舞伎を学ぶ人気講座を開催
他地域の芸能とともに盛り上げる活動も

「万人講・座」と銘打って一般向けの歌舞伎講座も開催しています。古典芸能の解説をするアナウンサーの葛西聖司さんから中央で活躍する歌舞伎役者の方に声をかけてもらって、壇上でお二人が歌舞伎トークをするのです。歌舞伎や、当時の歴史背景などを学べます。また、定期公演の幕間には南山大学の安田文吉教授に解説していただいております。
 定期公演の1週間後には、万人講が主催して伝統文化地域交流公演を開いています。引佐町の川名ひよんどり、愛知県新城市の鳥原歌舞伎など近隣の活動団体を招いて郷土芸能を盛り立てています。
 歌舞伎は団体でやるものですが、少子高齢化の影響もあって、舞台に上がる人集めはだんだん大変になってきています。国際社会の中で日本の伝統文化を語り継いでいくことはとても大切なことですから、地域の人が誇りを持って取り組めるよう活動を続けていく責任を感じています。


雄踏文化センター

浜松市西区雄踏町宇布見5427 <連絡先> TEL 053-592-4797(中村)


雄踏歌舞伎保存会「万人講」(ゆうとうかぶきほぞんかい・まんにんこう)

- 略 歴 -

1989雄踏歌舞伎保存会「万人講」設立
1990復活公演を開催。以後毎年開催
1995創作歌舞伎「梅薫宇布見の曙」を上演
2003静岡県文化財団主催の地域文化活動賞を受賞
200920周年記念誌「雄踏歌舞伎『万人講』のあゆみ」を刊行
     


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