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NPO法人 伊東市文化財史蹟保存会(えぬぴーおーほうじん・いとうしぶんかざいしせきほぞんかい)

伊東の文化の土台を守り、活性化する
一流の演者を招き、地元の英雄を祭る


えぬぴーおーほうじん・いとうしぶんかざいしせきほぞんかい

NPO法人 伊東市文化財史蹟保存会


理事長 堀口 武彦(右)
理事 虫明 博光(左)


取材日:2013/05/24

伊東の開祖とされる伊東祐親と曽我物語を軸にイベント開く

 38年前、心ある人物がその存在に気付かなかったら、現在の伊東の文化は違ったものになっていたかもしれない。地元で建築関連会社を営む堀口碓氏(故人)が、地元の歴史上の人物である河津三郎佑泰(すけやす)の血塚(ちづか:暗殺場所に建てられた塚)が藪に埋もれたような状況にあることを知った。河津三郎佑泰は平安末期の伊豆の武将。一族の確執で命を落とし、その子らが仇討を果たした逸話が日本三大仇討話として有名な曽我物語となった。堀口氏は歴史上の舞台となった血塚をないがしろにしてはいけないと整備に動き出す。賛同する地元の有志と結成した組織が現在のNPO法人伊東市文化財史蹟保存会となった。
 河津三郎佑泰の父、伊東祐親(すけちか)は伊東という土地を全国に知らしめる基盤を作った地元の英雄である。この伊東祐親を郷土のシンボルとして祭ろうと、伊東市文化財史蹟保存会の主催で、毎年5月に「伊東祐親まつり」が開かれている。市内を流れる松川の水上に作られる能舞台では、本格的な能、狂言にはじまり、地元の郷土芸能、芸妓、市民の芸事まで様々な演目が上演される。大規模な祭りを民間団体が主催するのは異例ともいえる。
 保存会の会員は手弁当で祭りを運営している。地域の企業を訪問して寄付を募る一方、超一流の演者を招く手はずを整える。2013年の第38回伊東祐親まつりでは4人もの重要無形文化財総合指定保持者(人間国宝)が舞台に立った。それをできるだけ多くの人に見てもらえるよう格安な席料にしている。理事長の堀口武彦さんや理事の虫明(むしあき)博光さんはじめ、保存会の会員皆が額に汗する献身的な働きがあってこそ実現している。
 地元に残る史蹟を保護し、啓蒙するための本も出版した。2004年には第17回地域文化活動賞(静岡県文化財団主催)で最優秀賞を受賞。地域への郷土愛に満ちた人々によって、伊東、そして伊豆の文化が守られている。


以下、インタビュー

1. 郷土愛

伊豆の歴史を語り継ぐ「伊東祐親まつり」
地域が一つになるには歴史・文化が核になる

堀口:伊東が観光地として隆盛を極めていた時期、何もしないでも街はにぎわっていました。しかし今や地域振興にかつてのような手法は通じなくなっています。地元の底流にある歴史・文化を核にして地域の心を一つにすることが大事です。伊東市文化財史蹟保存会は38年前の設立当初から地元の歴史を大切にしなければならないという意識を持って活動していましたが、こういう時代だからこそ、ますます「伊東佑親まつり」のようなイベントの必要性が高まっていると感じています。
虫明:伊豆には古くからある秋まつりが各所にあります。ところが各々の地域だけでやっているので広がりがなく注目されないのが残念です。みんなで連携して地元独特の文化への理解を深めないと、徐々にすたれていってしまうかもしれません。古くから歌舞伎や能、浄瑠璃、浮世絵などの題材となり、伊豆、伊東を全国的に有名にした曽我物語は、地域の心をまとめるうってつけの文化遺産だと考えています。

2. 協力者を呼ぶ熱意

人とのつながりを大切に生かして運営する

堀口:NPO法人という非営利の民間団体が主催しているので、資金繰り、運営はかなりの工夫と努力が必要になっています。足を使ってスポンサー探しをし、地元中心に420社の協賛を得ています。
 松川に設営する水上特設舞台には、本物の能、狂言の演者を呼んでいます。友人のつながりで紹介してもらった人間国宝の囃子方である大倉三忠さんにはずいぶんお世話になっています。とても誠実な方で、佑親まつりのために超一流の演者に声をかけてくれて、なおかつとても良心的な価格でできるよう開催に協力していただいています。

3. 舞台の活用

水上能舞台で演じられる人間国宝の能、狂言
子ども達や地元の芸能も披露する場所に

堀口:2013年の伊東佑親まつりの薪能では、狂言方の野村萬斎、シテ方の梅若万三郎など、人間国宝が4人も水上特設舞台に立ちました。650人収容できる客席はすぐに売り切れる人気でした。前座には「伊東子供能」の面々が舞台に立ちます。日本の古典芸術を学ぶとともに郷土の歴史文化を学んでもらうために子ども向けの教室にしています。
虫明:薪能のほか、郷土芸能や芸妓の芸を披露する奉納舞台や華舞台も開いています。本まつりの後の後夜祭は1週間続き、やはり特設舞台でミュージシャンがライブコンサートをひらいたりします。地元の人々の芸能のお披露目の場として活用してもらいたいという思いがあります。
堀口:これだけの規模の祭りですから、行政がもっと主体的に関わってもらいたいと考えています。行政の後ろ盾や権威づけがあれば、若者や他地域の人々の幅広い参加が期待できます。長く続けるために必要なことです。


東海館

伊東市東松原町12-10 TEL 0557-36-7726


NPO法人 伊東市文化財史蹟保存会(えぬぴーおーほうじん・いとうしぶんかざいしせきほぞんかい)

- 略 歴 -

1972河津三郎佑泰の血塚と参道の整備
1976第1回伊東佑親まつりを開催(以後毎年開催)。「伊東氏文化財史跡保存会」設立
1977「伊東市文化財史蹟保存会」に改名。
1998伊東佑親まつりで水上特設舞台を使った薪能の上演を開始。
2000第一回「曽我物語サミット」開催
2001NPO法人に認定
2002子供お能教室を開講
2004第17回地域文化活動賞(静岡県文化財団主催)で最優秀賞を受賞。歴史紹介コミック本「伊東むかし物語 伊東佑親とその時代」刊行。「第5回中部の未来創造大賞」(国土交通省など主催)優秀賞を受賞。赤沢山の「椎の木三本整備事業」完了


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