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プロジェクトZ 在来の味を愉しむ会 (ぷろじぇくとぜっと・ざいらいのあじをたのしむかい)

土地に伝わる在来作物の懐かしく新しい味
山と街をつないで地域全体を支える


ぷろじぇくとぜっと・ざいらいのあじをたのしむかい

プロジェクトZ 在来の味を愉しむ会


稲垣栄洋(右)
田形 治(左)
望月仁美(中央)


取材日:2013/06/5

静岡古来の作物を見守り、味を愉しむ会を開催

 プロジェクトZは、市民活動を通じ在来作物を世間にひろめる為の取り組みの名称である。「Z」はZAIRAI(在来)の頭文字を表す。在来作物とはその地域で古くから栽培されてきた農作物のことである。
 農学博士の稲垣栄洋さんは長らく県の農林技術研究所に在籍し、現在は静岡大学の教授である。静岡市で蕎麦屋を営む田形治さんは、美味しい蕎麦を追い求めるうちに清水で在来蕎麦に出会い、その魅力に引き込まれた。稲垣さんもまた別に、研究で訪れた井川で在来野菜の料理を食べ、やはりその強く濃い味に驚いたという。その時の料理を作った望月仁美さんは現在、在来作物の宝庫である井川で在来作物を残す取り組みをしている。
 静岡県の在来作物の多くは、静岡市葵区井川や浜松市天竜区水窪町などの山間部に残っている。品種改良された現在の作物に比べると、栽培が難しく採れる量は少ない。形が不揃いで流通には向かないなど欠点も多い。しかし、素晴らしく美味しい個性的な作物が揃う。その美味しさと感動は食べてみて初めて実感できる。より多くの人にその機会を設け理解してもらうことが、在来作物の付加価値を高め、種を後世に残すことに結びつく。
 在来種であるかを見極めるのは非常に難しい。稲垣さんたちの研究により確認できているのは現在30品目100種類ほどだが、候補となる品種はその倍近くにもなる。民家の庭先で細々と栽培され続けている在来作物なども多く、稲垣さんたちは頻繁に山を訪ね、そういった作物をつぶさに調べている。
 この希少な作物を残すには、需要と供給のバランスがとても重要だ。多くの人に興味を持ってもらうことが大切だが、需要ばかりが増えてもその種は絶えてしまう。かといって大量生産しようとすると在来作物は本来の味を失ってしまう。稲垣さんたちは研究・料理・農業というそれぞれの立場を活かし、注意深くそのバランスを見守りながら、この「在来の味を愉しむ会」を山と街の各地で開催している。


以下、インタビュー

1. 結(ゆい)の心

地域に伝わる味の価値を広め伝える
結の心で山の文化と人を支える

 農村には「結」という文化があります。それは、お金でなく気持ちの交流で結ばれ、お互いが協力しあう関係のことです。
 山のイベントでは、在来作物を作る農家の方々に会い直接話を聞きながら、その地域に伝わる伝統料理を味わうことができます。街では、いろいろなジャンルの料理店で在来作物の創作料理が食べられます。私たちは、市内で飲食店を営んでいる料理人の方々にこの企画への参加を呼びかけてきました。料理人の方々には、事前に山に行って作り手の方々と会っていただき、また作り手の方々にも街のイベントで創作料理を食べていただいています。
 このように、山と街双方の顔が見える機会を増やしてくいことで、山の農家の方々に「来年も頑張って作るだよ」と、喜んでもらえればなによりです。そのように交流が盛んになることで山にも人が増え、他の希少な伝統文化にも興味を持ってもらえるなど、地域全体の活性につながることを期待しています。
 この会では、在来作物を通じて「結」の関係をしっかり続けていくことが大事だと考えています。未知の味に出会い、皆でそれを共感していくことが本当に楽しいのです。

2. イベント活動

山に伝わる在来作物の伝統料理を愉しむ

 私たちが定期的に開催しているイベントでは、人知れず無くなりつつある在来作物の味を広めて、より多くの方にその存在を知ってもらうことが目的です。
 これまで、静岡市葵区井川の在来ジャガイモ「井川おらんど」の炭火串焼きを食べたり、浜松市天竜区水窪町で和紙の原料となるコウゾを使った幻のコウゾ蕎麦を復活させたりするイベントなどを開催してきました。また、この会に賛同してくれた料理人たちが、各々の店で在来作物を使ったメニューを提供する取り組みも行っています。

3. 在来種の可能性

在来作物を広めることは“山”を支えることに
在来作物を食べることで静岡県が盛り上がる

 在来作物は無理して他の土地で沢山作ろうとすると、味が落ちて本来の価値を失ってしまいます。その地で育てることで本来の味が保たれます。さらに、そこに伝わる栽培方法や食べ方、その風土に根付いた人々の暮らしを含めて「在来」となるのです。
 山の方々の農作業は本当に丁寧で美しいです。種を1粒ずつ、大切に育てています。動きに哲学があります。それを見るとスピードばかりを求める自分たちの生活が恥ずかしくなります。私たちが失ったものはそういったところにもあります。
 今、中山間地では高齢化が深刻化しています。山で在来作物を一生懸命作っている農家の方々にも当然あてはまります。この方々の意志を継ぎ、在来作物をきっかけに山の価値が再認識され、地域で育った子どもたちがいずれ山に戻ってきてくれたらと願っています。そして、若い力が活力源となり、この地域の活性化につながれば嬉しいです。
 山と街の人たちがお互いを思いやり、そして静岡県全体が豊かになる。その力が在来作物にはあると信じています。


蕎麦たがた

静岡市葵区常磐町2丁目6-7 TEL 054-250-8555


プロジェクトZ 在来の味を愉しむ会 (ぷろじぇくとぜっと・ざいらいのあじをたのしむかい)

- 略 歴 -

2007田形氏/清水の在来蕎麦の味に驚き、研究を始める。
2011稲垣氏/雑穀研究会で訪れた井川で在来野菜の料理に出会う。
在来蕎麦の存在を知る。
在来作物研究会 発足
2012「静岡そばの会」で稲垣氏、田形氏が出会いともに調査を始め在来作物の重要性を再確認する。
田形氏/井川にて焼畑を復活させ静岡在来蕎麦を栽培。
2013稲垣氏/プロジェクトZ 在来の味を愉しむ会 発足。
市内の飲食店19店舗で「在来野菜の食卓」開催。
田形氏/「静岡在来そばブランド化推進協議会」発足。
映画「よみがえりのレシピ」上映に合わせ上映期間中、各種イベント「巡る種の物語」プロジェクト開催。


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