» 富士芸術村(ふじげいじゅつむら)|ふじのくに ささえるチカラ

富士芸術村(ふじげいじゅつむら)

アートが自然にとけ込む情緒ある古い邸宅
若手作家と地元の人々との温かい交流の場


ふじげいじゅつむら

富士芸術村


漆畑勇司


取材日:2013/06/24

芸術のまち富士市の中心にと意欲的に活動

 富士芸術村のある富士市大淵は、富士山のふもとの自然豊かな心地よい地区だ。そこにある藤田邸と呼ばれた情緒ある昭和の邸宅が、富士芸術村の舞台となる。延床面積100坪、入母屋造りのこの家は、昭和の職人による美しい技が随所に施され、柱や床も当時の木材がそのまま残る。
 村長である漆畑勇司さんは、彫刻家としての活動を軸に、地域とアートを結ぶ活動を長く続けている。東京の美術大学卒業後、地元に戻り美術研究所を設立した。そして高校や公民館で美術講師も兼任してきた。すべての講師歴をあわせると、富士市で彼の教え子はいったい何人いるのだろうか。今では多くの教え子が作家や美術講師として活躍している。
 漆畑さんは開村よりさらに以前から、アートをテーマにした数々のワークショップを主宰してきた。そのような活動や、作家となった教え子たちの発表場所など、すべての芸術活動の拠点になる場所を漆畑さんはずっと探し続けていたが、市に寄贈されていた藤田邸をようやく借り受けられることになり、2004年に富士芸術村を開村した。
 周囲の多くの協力のもと、古い空き家を大掃除して生き返らせた。漆畑さんには人が集まる魅力がある。毎週金・土・日曜日に開村し、作家による展覧会、子どもから大人まで参加できるワークショップ、創作の場の提供などを継続的に行っている。現在は5人のボランティアスタッフが交代で村に在中している。
 ここでは富士芸術村の雰囲気にあった展示内容であるかの審査を経て、無料で展示ができる。そこに集まる人々が、無理のない自然な展示空間の中で、芸術をかた苦しく考えずに皆が交流できることが重要だと漆畑さんは考えているからだ。今では若手作家たちの発表の場、また作家たちの交流も増え、それに地元の人々の協力も加わり、すでに村はアートと人とをつなぐ接点になっている。
 将来的には、富士の恵みを多く受けているこの地区のすべての施設や機関とつながり、現在の活動の枠をひろげていくことで、富士市全体が芸術のまちになり、この富士芸術村がその中心となる構想を漆畑さんは描いている。


以下、インタビュー

1. イベント

子どもにも大人にもゆとりと心の豊かさを

 毎年11月第2日曜日に「富士芸術祭」を開催しています。この祭りは、展示やワークショップにライブや屋台も組み入れ、子どもも大人も皆で気楽に芸術に触れることのできる、とても温かみのある交流の場となっています。期間中、僕が実行委員長を務めている市の事業「紙のアートフェスティバル」で入選した作家の作品を展示し、作家のトークセッションも開きます。この祭りでは、いつも地元の方々が協力して盛り上げてくれています。本当に嬉しいことです。
 ほかに夏休みの小学生向けのイベント「ぼくもわたしもアートする!」は、庭でのどろんこ祭りや海賊船造りなどの企画を、学校の先生がたと一緒に開催してきました。泥に浸かった子どもが今まで見せなかったような笑顔を親が見て、感激している光景などもありました。
 僕は、長年の活動の中でたくさんの感動を経験してきました。その感謝の気持ちをかたちにして地元に少しでもお返ししていきたいのです。その循環が心のゆとり、豊かさにつながるのだと思います。

2. ギャラリーとアトリエ

アートを通じ若い作家と地元との交流の場に

 僕は、若い作家たちが地元で作品を気軽に発表できて、人々が自然に集まるような場所を作りたかった。一般の美術館では体験できないような空間にしたいと思っています。
 ギャラリーの目的として、若い作家の育成に重点をおいています。ここは芸術性の高さを評価する場所ではありません。少し山奥だけど、彼らがのびのびと自由に創作活動をして、作品を発表する楽しさを味わい、いろいろな人々との交流にこの空間を活用してほしいです。それが作家として成長する大事な要素になるのだと思います。

3. 後進への期待と夢

活動を継続するには人のつながりが最も大事
夢の実現を目指して種をまき後進を育てる

 いま実際に運営に関わっているのは、すべて市民ボランティアです。それに寄付金も加え、多くの方々の協力もあって芸術村は成り立っています。人のつながりがいかに大事か、このような活動をしているとよくわかります。
 僕は「はばたけ美術部!」という、市内の何校もの中学校美術部の生徒を集めて絵画鑑賞の仕方や技法を学ぶ講座を開き、それまで無かった交流の場を作りました。ほかにも美術の先生になった教え子たちを集めて「ハート&アートの会」を結成し、心の教育をテーマに活動してきました。今は別の方に任せていますが、とてもいい感じに盛り上がっていますよ。
 このように、僕が立ち上げたことを、次々と後進にバトンを渡していきたいのです。それは、この富士芸術村が、最終的に芸術のまち富士市の中心になる夢を実現させるために必要なことなのです。とても時間がかかる計画ですが、ちょうど富士山が世界文化遺産に登録され、活動するのに今がとてもいい機会です。僕は、次の世代に引き継ぐために種まきをしているのです。


富士芸術村

静岡県富士市大淵1516 TEL 0545-35-0509


富士芸術村(ふじげいじゅつむら)

- 略 歴 -

2004開村 開村記念展
富士市在住作家5人の作品展、ワークショップ等
2005開村1周年記念
2006開村2周年記念
2006耐震強度のため一部改築工事
2008再オープン
第2回富士芸術祭
2013第7回富士芸術祭


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