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杉山ダルマ店(すぎやま・だるまてん)

三大だるま市で知られる富士毘沙門天大祭
そのお膝元でだるまを造り続けて65年


すぎやま・だるまてん

杉山ダルマ店


杉山ダルマ店社長 杉山 幸夫

※現在、杉山ダルマ店は、杉山氏の甥の芦川 博將氏が経営している。


取材日:2011/11/29

時代が変わり、神棚がなくなっても、だるまに願いを託す人のために造り続ける

 日本の三大だるま市の一つである富士の毘沙門天大祭。旧正月に行われるこの祭りは、だるまで境内が埋まる。杉山ダルマ店はその中で85年余り店を張ってきた。大正の末期、先々代が静岡市の沢屋さんからだるまをわけてもらい、毘沙門天大祭に店を出したのが杉山ダルマ店の始まりだ。その後沢屋さんでの修行を経てだるまを造るようになった先代が継ぎ、当代の杉山さんは三代目の店主となる。
 杉山さんがだるま造りの道に入ったのは昭和20年、15歳の時だ。毘沙門天大祭のさなかに空襲警報が鳴る、作業所が取り壊され強制疎開させられる、そんな時代に、戦争で怪我をして戻った父親を手伝い始めた。物心ついた頃からだるまの中で育った。学校から帰ると、父親がだるまをいつも夜遅くまで造っていた。手伝いは始めたものの若い頃はいやでいやで仕方がなかったというだるま造り。一度離れてみたが、座ってだるまと向き合って人に会う必要がないこの仕事は、愛想一つ言うのも苦手な自分に向いていると気づいた。それから60年余、杉山さんはだるまを造り続けている。
 毘沙門天大祭が開かれる富士市吉原では、だるま作りをしていた店がかつて4店ほどあったが、現在は杉山ダルマ店ともう1店になってしまった。長引く不況で企業の経費節減の対象となるのか、だるまを買い求める会社が減り、だるま市を訪れる人の数は昔に比べると少なくなっている。しかし、毎年この時を待って遠方から足を運んでくれるお客様がいる。通り沿いにある作業場の土間に赤塗りのだるまを干しておくと、それを見た人の歓声が聞こえてくる。人に喜ばれるものを造りだすこの仕事を辞めるわけにはいかないと杉山さんは思っている。


以下、インタビュー

1. 富士市吉原の鈴川だるま

土地ごとに特徴がある「だるま」
同じようでも描く人によって表情が違う

 昔、吉原駅は鈴川駅と言って、あそこら辺は鈴川という地名だったんですよ。それで私たちの造るだるまは鈴川だるまと呼ばれています。だるまにはそれぞれ土地ごとに特徴があって、鈴川だるまは武州や上州のだるまと比べるとおとなしい顔ですね。うちで造っているのは馬の毛で眉や髭を付けた髭だるまとその髭がないものの2種類です。型を胡粉(ごふん)で白くして1日干す、赤く塗って1日干す、工程と工程の間に干す時間が必要ですから、仕上がるのに10日間くらいかかります。特大のものから手のひらに乗るくらいの小さなものまで、合わせて年間で3万個くらい造ります。それぞれ全部手描きですから、大きいものも小さいものも手間は同じと言えば同じです。いちばん難しいのは墨の部分、髭を描き入れるところでしょうか。みんな同じ顔をしているように見えて一つ一つ表情が違います。描く人によっても違っていると思いますよ。

2. 富士毘沙門天大祭の出店

1年に1度会うだけの
長い付き合いのお客さんもいる

毘沙門さんには群馬や埼玉、山梨からだるまが集まって来ます。昔はたくさん造れませんでしたから、3日間のお祭りの中日でうちのだるまは売り切れました。境内に出る店は多い時で120ほどありましたが、今は80店くらいですかね。
毎年寄ってくれるお客さんが何人かいて、一年に一度会うだけですが、長いお付き合いになります。親父さんに連れて来られた子供が大人になって来てくれたりして。お客さんと一緒に年を取ってきたような気がします。

3. だるま造りへの思い

大切な場所に置かれるものだから
良い顔のだるまを持っていってもらいたい

 自分が不機嫌な時にはそういうだるまが出来てしまいます。ですからそんな時には造りたくありません。だるまはご先祖様や神様の傍らに置かれることが多いですから、機嫌が良い時に造ったものを持っていってもらいたい。そのためには自分自身がいつも心穏やかでいなくてはなりませんね。選挙の時はテレビを見たくありません。落選した事務所ではだるまだけが置きっ放しになって晒されているようでかわいそうです。
 最近はいろいろな色のだるまがありますが、だるまの赤には魔除けなどのちゃんとした意味があります。私は赤以外のだるまは造りません。型は機械で造れるようになりましたが、そこから先は相変わらず手作業の手間のかかる仕事です。うちの子供達と一緒に小さい時からだるまの中で育った甥がこの仕事を手伝ってくれています。神棚のない家が増えてきてだるまがどこに飾られることになっても、喜んで持って帰ってくれるものを造っていきたいですね。

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杉山ダルマ店

静岡県富士宮市宮原541-1 TEL 0544-58-4190


杉山ダルマ店(すぎやま・だるまてん)

- 略歴 -

大正末期1代目の祖父が富士毘沙門天大祭でだるま販売を始める
昭和初期2代目の父親が静岡市沢屋だるま店でだるま造りの修業をし、だるま造りを始める
1945当代社長がだるま造りを手伝い始める
1987作業所を富士市から現在の富士宮市に移転


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