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新朗読×杉山直(しんろうどく×すぎやまちょく)

売れっ子子役から始まった“声”を出す表現活動
静岡を拠点に新しい朗読法で人々に感動を与える


しんろうどく×すぎやまちょく

新朗読×杉山直



取材日:2013年08月06日

文学の魅力と表現する楽しさを伝え、教える

 杉山直さんは「新朗読」という朗読の新しい手法で文学の魅力を広めるため、静岡を拠点に、2007年の初公演より多数の公演活動をしている。新朗読とは、文学作品を全文暗記し、音楽や照明とともに表現豊かに暗唱するという、今まで例を見ない朗読である。これは、さまざまな経験を経て杉山さんが行き着いた舞台芸術である。そして活字離れが目立つ現代人に、改めて文学の楽しさ、表現する楽しさ、日本語の大切さを伝えていこうと、自主公演や学校公演などを次々と開催している。
 杉山さんは5歳から小学6年生までの間、劇団文化座の全国公演、「意地悪婆さん」で青島幸男さんの孫役など、売れっ子子役として活躍した。その前後も転勤などで静岡・東京を何度も引っ越していたが、大学生時代に家の事情で静岡に再び戻り、そこから杉山さんの次のステージが始まった。
 それまでの役者の経験に加え、静岡ではDJ・司会者・講師やアナウンサーの顔を持ち、さらにライブハウスのオーナーまで経験した。それまでのさまざまな世界で活躍する人々との出会いを通して、杉山さんは自身の表現活動に対しても真剣に考える時期が訪れた。それを乗り越えて、たどりついたものが朗読に演技の要素を加えた新朗読である。
 現在、新朗読の活動は、自主公演に加え、静岡県内の小中高学校や児童福祉施設などでの公演が主になる。題材には『星の王子さま』『走れメロス』『セロ弾きのゴーシュ』など名作といわれる文学作品が選ばれる。文豪たちが命がけで書いた言葉の重みと美しさを伝えたいからだという。
 杉山さんは、富士市民大学で司会者養成講座や読み聞かせ・話し方講座の講師のほか、富士市で「新朗読の会」という教室を主宰している。ここでは小学生から70歳代までの20人の教え子が暗記と朗読を習い、毎年発表会を行っている。
 インターネットやゲームなどの声を出さない遊びが蔓延しているなか、子どもたちに思い切り声を出して自由に表現してほしいという思い。本離れが目立つ大人たちにも再度、本を読む楽しさを思い出してほしいという思い。杉山さんは、そういった願いを込めて、新朗読を通じて人々に語りかけている。そして表現の幅を広げ、静岡から全国への普及を目指して活動を続けている。



以下、インタビュー

1. 人生の軸

観客皆が平等に楽しめる舞台の為きめ細かな活動
さまざまな人との交流を生む新朗読は人生の軸

 公演活動は、小中高等学校での学校公演と、大人向けの文学作品を題材にしたホールでの公演、福祉施設での公演が主になります。以前、公演中に障害者の女の子が声を出して、その時お母様が周りに迷惑だからと彼女をホールから連れ出してしまったのです。それを見た時とても悔しくて、すぐに彼女のいる施設を調べて真っ先に公演に行き「ここでは自由に声を出して自由に振る舞っていいんだよ」と言いました。
 正直、障害者の子どもたちに僕の新朗読が伝わっているのか最初は不安でした。公演中、誰も僕の顔を見ていなかったのに、ある一言の台詞を喋った時に一斉に拍手が湧いたのです。伝わっていたことに感動して一瞬、先に進めることを忘れてしまいました。それが自信となって、今でも福祉施設でも公演活動を続けています。
 新朗読を通じ、コミュニケーションの楽しさを知りました。僕は仕事上でいろいろな顔を持っていますが、この新朗読の活動は、僕の人生の軸となる活動なのです。

2. 読書の世界への入り口

全文暗記は出発地点でその先の高みを目指す

 今、すぐに出来るのは9作品、少し練習が必要なのは10作品ほどでしょうか。公演の後で、どうして暗記できるかよく聞かれますが、簡単です。覚えるまで読めばいいのです。でも、全文暗記はスタート地点で、ゴールはずっとその先です。朗読を舞台作品として仕上げるまで、試行錯誤を繰り返してきました。
 この新朗読は、「読書の世界への入り口」です。主宰している新朗読の会や公演では、文学の魅力の再発見や、表現することの楽しさを感じとっていただきたいです。

3. 情操教育

子どもたちに直球で伝える言葉の表現方法
新朗読を静岡から全国へと信念を持ち活動

 例えば「熱い」「暑い」かを、しっかり表現して伝えることで、子どもたちにその意味が通じるようになる。僕はもともと役者ですし、そんな朗読の読み方があっても良いと思います。
 現代の子どもたちは表現力に乏しいと言う人がいますが、それは大人が与えるパソコンやゲームなどの遊びの影響で、もともとは違うはずです。子どもたちが生き生きと表現できて、それが周囲から浮いてしまうようなことの無い社会にしたいです。そのためにも温度が感じられ、顔や声が目の前にある、そんな朗読を定着させていきたいです。
 観客席との境を感じさせず、聞き手とコミュニケーションのできる舞台をつくりたくて、昔あった紙芝居をヒントに「大きな紙しばい」という、スクリーンに物語の絵を投影して展開していく新朗読の新しい表現を考えて、始動しています。
 今後も、コミュニケーションに必要な言葉の大切さと、文学作品の楽しさを伝える方法として、静岡から全国に新朗読を広めていきたいです。


杉山直

お問い合わせはメールにてお願いします。 E-mail:choku3@gmail.com


新朗読×杉山直(しんろうどく×すぎやまちょく)

- 略 歴 - ※初回公演のみ掲載

2007初公演『桜の森の満開の下』(坂口安吾)
『星の王子さま』(サン=テグジュペリ)
2008『走れメロス』(太宰治)
『セロ弾きのゴーシュ』(宮澤賢治)
『モチモチの木』(斎藤隆介)『源氏物語』
『注文の多い料理店』(宮澤賢治)
2009『黄金風景』『海』(太宰治)
『富士山のかぐや姫』国民文化祭出演作
2010『八郎』(斎藤隆介)
『びゅんびゅんごまがまわったら』(宮川ひろ)
『ヤクーバとライオン』
ゲーテの詩朗読コンテスト準優勝
2011『三コ』(斎藤隆介)『羅生門』(芥川龍之介)
『妻よねむれ』(徳永直)
2012『杜子春』『桃太郎』(芥川龍之介)
『スーホの白い馬』(モンゴル民話)
2013『ごんぎつね』(新美南吉)
『待つ』(太宰治)『桜桃』(太宰治)


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