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SPAC‐静岡県舞台芸術センター(すぱっく・しずおかぶたいげいじゅつせんたー)

稀に見る規模と美しさの日本有数の県立劇場
静岡に演劇文化を定着させるため活動を続ける


すぱっく・しずおかぶたいげいじゅつせんたー

SPAC‐静岡県舞台芸術センター


芸術総監督 宮城聰


取材日:2013年08月02日

一流の演劇作品を創作し人材育成にも貢献

 1995年に設立された静岡県舞台芸術センター(SPAC)は、専用の劇場や稽古場から、俳優や創作・制作スタッフまで抱える県立劇団である。この劇団の芸術総監督には、日本を代表する演出家2人が関わっている。設立当初より静岡の演劇文化普及に尽力してきた鈴木忠志さんと、2007年に鈴木さんの後を継いだ宮城聰さんである。
 SPACは、東静岡駅近くの静岡芸術劇場と、日本平までの道のりにある舞台芸術公園の2カ所を拠点としている。稽古場、舞台美術等制作室、カフェスペース、野外劇場など、万全の設備が整っている。これだけの規模と美しさを持つ公立劇場は、世界的に見ても珍しい。宮城さんはこの劇場で、世界に通用する演劇作品を創り続けている。
 宮城さんは自身の作品に対する芸術性の追求とともに、静岡に演劇文化を根付かせようとしている。そして演劇を通じて、地方都市にとって将来一番の宝となる人材の流出を防ぎ、逆に人材が外から流入するような、豊かな文化を持つ街にするための活動をしている。宮城さんのいう人材とは、際立ってユニークな思考や才能の持ち主のことだ。演劇でも、似た俳優だけでは舞台として成立しない。地域に於いても、さまざまな個性の人が多くなるほど街は活気づく。
 それを受けて、才能に溢れた子どもたちが、進学や就業のため地元から出て行かずとも、静岡に住みながら世界を目指せるような教育文化をつくりたいという宮城さんの構想のもと、SPACでは、いくつもの人材育成事業にも取り組んでいる。
 「SPACシアタースクール」では、子どもたちが夏休みの間、SPAC俳優たちの指導による稽古から発表会までを行う。「スパカンファン・プロジェクト」では、オーディションで選出された子どもたちが、国際的に活躍している振付家のメルラン・ニヤカムさんとともに、ダンスを軸にした極めて芸術性の高い舞台を生み出している。これらの中から、静岡にいながら演劇の道を志す若者も既に数人いる。そのように、演劇の分野で幅広い育成・支援活動を続けている。
 世界を照準にすることで、芸術と教育の両方ともに高めていくことができる。宮城さんは、静岡県全体を舞台に仕立て、その中でいかに魅力的な登場人物が現れるか、期待しながら演出しているようだ。


以下、インタビュー

1. 若い世代に向けて

子どもたちが地元で人生の目標を持ち続ける
演劇を通じてその土台づくりに挑む

 僕が子どもの頃、平凡な言葉で言えば孤独でした。当時は自分だけが浮いていると思っていましたが、今になって思えば、他の皆も同じだったんですよね。それで自分の居場所が欲しくて、高校1年生の時に演劇を始めました。そこは、自分が浮いていないと感じられ安心できる場所でした。大学の演劇サークル時代でも今になっても同じです。それが今の僕の出発点です。
 僕が演劇と出会えたことは幸運です。今でも昔の僕と同じように孤独感を感じながら、何も行動を起こせずに諦めている子どもは多いはずです。SPACと関わることで、その子たちが演じる楽しさを知り、舞台でも大人たちが全身全霊で何かを訴えている様子を観て、それらが何らかのかたちで励ましになってくれたら嬉しいです。
 そして、子どもや若者が、世界を目指そうというスピリットを維持しながら静岡で活動できるような、ずっと地元にいても世界とつながっていることを実感できるようにしたいのです。

2. 演劇作品

活動のすべてが演劇と人への情熱と愛情

 演出するうえで、肉体の動きを重視しています。言葉と肉体との火花を観ていただきたいのです。SPACの俳優は言葉に対して体を敏感に反応させるトレーニングを常にしています。そして、初めて見る宝石は本物のダイアモンドの方がいいというように、初めて舞台を観る子どもたちのためにも、作品は一流のクオリティーにしないといけません。
 僕は、普段ほぼ家とSPACの往復ですが、SPACには無い魅力を持つ他の劇団にも時々訪ねて応援しています。地域の中で偏らず、いろいろな個性の劇団がある方が面白い街になるからです。

3. 演劇の静岡

芸術都市・静岡を目指し世界に向けて発信
地域の宝となる優れた人材の流入を促進する

 例えばヨーロッパでは、シェイクスピアの演劇を子どもの時から何十回も観ている人はたくさんいます。そのような環境では演出もひとひねりしないとなかなか認めらません。でも、日本ではそのような演出はまだ受け入れられにくいのが現実です。
 演劇文化を日本に定着させるには、難解でなくストレートな演出にして受け入れられやすくし、裾野を広げる努力をしなくてはなりません。その一方で当然、芸術面での頂上を高くしていくことも僕たちには必要です。
 SPACでは、特に古典などの普遍的な作品は、時間軸を守りわかりやすく演出しています。海外から招く演出家にもそのように頼んでいますが、そういった制約の中で生まれた作品は、非常に高い評価を得ています。わかりやすさと芸術性の両立という奇跡的なことが起きていると思いました。
 僕は、その流れのなか、優れた演劇を生み出す静岡という地名を世界に向けて発信していきたいです。美や芸術が定着した土地は価値が高まり、それによって優れた人材も流入して豊かになっていくのです。


SPAC‐静岡県舞台芸術センター

静岡市駿河区池田79-4 054-203-5730


SPAC‐静岡県舞台芸術センター(すぱっく・しずおかぶたいげいじゅつせんたー)

- 略 歴 -

1994静岡県が、鈴木忠志へ静岡県芸術文化振興顧問を委嘱
1995静岡県舞台芸術センター設立 芸術総監督:鈴木忠志
1997静岡県舞台芸術公園竣工、柿落とし公演『リア王』他(演出:鈴木忠志)
1998静岡芸術劇場竣工
1999静岡芸術劇場柿落とし公演『デュオニソス』『カチカチ山』(演出:鈴木忠志)
世界の舞台芸術の祭典「第2回シアター・オリンピックス」開催
2000国際演劇祭「Shizuoka春の芸術祭2000」開催
2007第2代芸術総監督に宮城聰が就任
2011「Shizuoka春の芸術祭」の名称を「ふじのくに⇄せかい演劇祭2011」に改め開催


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