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知半アートプロジェクト(ちはんあーとぷろじぇくと)

築200年以上経つ古民家に芸術家たちが集う
文化交差による時空を伊豆から世界に発信


ちはんあーとぷろじぇくと

知半アートプロジェクト


代表(知半庵庵主) あわやのぶこ


取材日:2013年08月09日

現代と古典の融合によるアートを創出

 伊豆の国市大仁に「知半庵」と呼ばれる江戸時代から残る古民家がある。400年以上も続く伊豆の庄屋・旧菅沼家の屋敷で、国の有形文化財にも登録されている。年に1度、気鋭の芸術家たちが国内外からこの家に集まり、展示やコンサートが開かれている。
 その主催者である、あわやのぶこさんは菅沼家の子孫であり庵主でもある。そして数人のスタッフとともに「知半アートプロジェクト」という取り組みを2007年に始動した。この名前は、句や絵をたしなみ多くの文化人と交流していた、あわやさんの祖父・菅沼謹吾さんの雅号「菅沼知半」にちなんだものだ。物事は良いころあいを知る(半ばを知る)ことが幸せ、という意味である。あわやさんは、祖父の生き方を手本に、伊豆文化の香る生家に現代アートをもたらし、歴史ある古い家を新しく蘇らせた。
 大学時代の留学を機に海外生活が長かったあわやさんは、通訳や雑誌記者を経て、現在は異文化コミュニケーションを専門分野とし、大学で教鞭をとっている。このプロジェクトのテーマが、日本と海外、過去と現在といった文化交差であるのは、そのような分野背景や経験を持つあわやさんにとってごく自然なことなのである。
 舞台は、中伊豆の典型「六つ間取り」という建築様式を持つ知半庵の、日本家屋としての可動性を大いに活用し、毎回、そのアートにあわせた設定に作られていく。アーティストたちは何度も知半庵を訪れ、しばらく逗留したり、あわやさんと家のエピソードなどを語り合いながら、作品の着想を得たり演出を考えていく。これはアートの世界では、サイト・スペシフィック(その場、その空間から着想、創出する)と呼ぶアートの表現方法である。
 そして開催する度に評判を呼び、5回目のコンサートでは県内外から総勢130人が集まった。あわやさんは、世界にも通用する、あまり例を見ないこの取り組みを発信し、地元に新しい文化の風を運んでいる。
 毎回、知半アートプロジェクトの専属写真家、岩佐英一郎さんをはじめ、異なった分野の人々が集まりスタッフとして活躍。駐車場や大量の座布団などを提供する近所の人々の協力など、地元にも支えられながら、年一回のアートを手作りしている。来年はフランス人作家による美術展を計画しており、準備はすでに始まっている。


以下、インタビュー

1. 文化交差

知半庵を舞台に古典が新しいイメージに変身
異文化交流の根付く伊豆の地でそれを再現

 最初、この伊豆の地でこの取り組みがどれほど受け入れられるか未知数でした。「知半アート」の皮切りコンサートには、以前、他の場所で聞いた時、その音色と彼の曲の作り方に魅力を感じた、米国人尺八奏者のクリストファーさんと、ヴォイスのきむらみかさんに出演をお願いしました。
 クリストファーさんは、知半アートの魅力を、「従来の邦楽コンサートとは異なり、尺八を始めて聴く地元のシニアから、琴を習う大学生、都会の若いパンク青年まで幅の広い観客が各地から訪ねて来てくれることが、本当に嬉しい」とコメントしています。
 伊豆は、歌舞伎役者や多くの作家、画家など文化人たちが逗留した日本の最初のリゾート地でした。また「知半庵」は、下田の米国領事館から江戸に向かう時、ハリスが通った旧下田街道沿いに建っています。この土地には、異文化交流、文化交差のバックボーンがあるのです。異なる環境や文化背景を持つ人々がこのイベントに集まり、言語や人種の違いを超えた時空を作り、伊豆からそれを発信していきたいのです。

2. コンサート

歴史ある家の魅力と芸術家たちによる共演

 毎回、私は出演者と一緒に知半庵で、演出などを考えてコンサートを制作しています。例えば、2人の尺八奏者による名曲「鹿の遠音」の演奏で、観客たちを秋の深山の谷に見立て広間の中央に客席を作り、その両サイドに尺八奏者が1人ずつ立ち、まるで2頭の鹿が谷を挟んで泣きあうように演奏しました。ほかにも、日米5人の舞踏家などによるダンスでは、部屋と部屋を巡りながら踊り、観客もそれにつれ移動しました。今年のフルートとコントラバスの競演では、演出に周囲の自然の音を録音した音源を使うなど、伊豆という地域と庵の特徴を生かし、ここでしか出来ないことをしています。

3. アートの価値

アートの価値を高め地元の魅力とともに発信
知半庵から生まれた芸術が海外に広まり繋がる

 最初の2回のイベントに手応えを感じましたので、第3回目からは、伊豆の国市に後援をお願いし、市長さんもそれから毎回出席してくださいます。今年、初めて静岡県文化財団に後援申請をしましたが、行政からの精神的な支援は主催者として嬉しいです。
 遠方から来てくださる方々には、アートだけでなく、アーティストとの交流、家の空間、孟宗の竹やぶなどの裏庭などをゆったりと楽しみ、伊豆の魅力を感じていただきたいと思います。そして地元の方にも、身近な場所と安価な入場料で気軽に興味深い芸術やアートに触れることが、伊豆でも可能なのだと伝えたいのです。
 この周辺が田中村と呼ばれていた大正時代、村長を務めていた私の曽祖父、菅沼荘治によると、当時の中伊豆は大変に貧しかったそうです。彼はそういった状況下でも教育と文化が大切だと訴え、例えば、女子の寺子屋教育や、文化領域に力を注いだと聞いています。芸術に触れることが、気軽にできるような感覚や装置を、この家を活用して作っていきたいのです。アートや文化は都会のものだけではありません。地元に新しい魅力を創りだすことができたら幸いです。


知半庵

伊豆の国市大仁(伊豆の国市の大仁駅から徒歩8分)
※個人住宅のため、知半アート開催時のみ公開 TEL090-8306-9766
E-mail:info@chihan-art.com


知半アートプロジェクト(ちはんあーとぷろじぇくと)

- 略 歴 -

2007知半アートプロジェクト始動
第1回 尺八と声の競演コンサート「竹の声、人の笛」
2008第2回 日米ンテンポラリーダンス IZU HOUSE:伊豆の家
2009第3回 地無し尺八二本のコンサート「江戸の尺八、時空を翔ける」
2010第4回 木彫作品展「記憶 素子 storage element」
2013第5回 日米共同「果報は寝てまて」コンサート(フルート&コントラバス)
+音の展覧会(自然の音&笙・三味線・パーカッション・尺八など)


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