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NPO法人 せんがまち棚田倶楽部(えぬぴーおーほうじん・せんがまちたなだくらぶ)

人間も生き物も健やかに育む美しい棚田
伝統や景観、社会の多様性まで守る活動に


えぬぴーおーほうじん・せんがまちたなだくらぶ

NPO法人 せんがまち棚田倶楽部


理事長 山本 哲


取材日:2011/12/16

風景、生き物、農作業の魅力で「棚田へいこうよ」と呼びかける

「千框(せんがまち)」とは千枚の田んぼを意味する言葉。斜面の形状に合わせて、大小とりまぜ段々に作られた棚田は独特の景観を見せる。水が張られた田んぼには、時節に応じて様々なものが映し出される。梅、桜、月、青空、夕焼け…日本の原風景といっていい美しい光景だ。その棚田を守ろうとNPO法人「せんがまち棚田倶楽部」が活動している。
 現理事長の山本哲(さとし)さんは、減り続ける棚田をなんとかしたいと思っていた。地元菊川市の上倉沢にある棚田を活動の場として、仲間と「千枚田を考える会」を発足したのは平成6年のことだ。平成11年にこの棚田が静岡県の「棚田等十選」に選ばれると「棚田保全推進委員会」と名前を変えて米作りに本格的に乗り出した。その10年後にNPO法人となり、棚田オーナー制度を導入、「棚田へ行こうよ」と大勢の人に呼びかけて保全活動をしている。
 実は構成員の多くは米農家ではなく茶農家。棚田での稲作は手間がかかるため、同時期に平地の田んぼの作業が忙しくなる米農家は面倒を見きれないのだ。自然と繁忙期がややずれる茶農家が主導するようになった。ただそうやって昔ながらの方法を優先しているからこそ、周辺の環境も守られている。棚田の足元を見てみれば、ホタル、カエル、タンポポなどの外来でない日本古来の動植物が生息し、大学による生態系の研究の場にもなっている。
 田植えや稲刈りといった作業には大勢の人がやってくる。小さい子供から老人まで和気あいあいと作業する姿は、様々な形が寄せ集まる棚田の姿と重なる。棚田を守ることは、伝統を守り、景観を守り、生物を守る。そして皆が仲良く生きる人間社会の多様性をも守っている。





以下、インタビュー

1. 保全活動の輪

市民の参加意識を高める棚田オーナー制度
個人、家族、法人、様々な人がやってくる

 NPO法人化したのをきっかけに、棚田オーナー制度を取り入れました。オーナーには農作業に参加してもらい、収穫した米を受取ることができます。2011年時点のオーナー数は56組です。20代から60代まで幅広い年齢層ですし、子供を連れて参加する家族も多いです。テレビ局の番組や、県の教育委員会もオーナーになっていますし、他県からの参加もあります。
 田植え、稲刈りなどでは500人規模の参加がありますが、みなさん喜んでやってくれます。2011年の田植えは台風5号が接近して雨天となりました。日程を合わせて遠くから参加してくれる人もいるので、延期はできません。ところがみなさん風雨の中をやってきて「いい体験ができた」ってニコニコしていました。うれしいことです。
 畦道(あぜみち)にキャンドルを並べる「あぜ道アート」というイベントや、梅、桜が咲くころには多くのカメラマンも訪れます。

2. 日本の生態系を守る

棚田だからこそ、生息する生き物たち

 ここにはめずらしい生き物がいます。静岡県では絶滅の危機が指摘されているニホンアカガエルがいますし、よく見かけるアマガエルとは少し違うシュレーゲルアオガエルが生息しています。名前は西洋的ですが日本の固有種なんです。タンポポも日本古来の在来種カントウタンポポが群生します。外来種の侵入が少ない生態系であることが注目され、静岡大学の生態学研究室のフィールドワークの場になっています。



3. 棚田を育てる

後世に伝えていくため、棚田の復元を続ける
見掛けだけでない昔ながらの田んぼを

 3月に田起こしと畦塗り(畦道に泥を塗る作業)をしていますが、畦道はデリケートなので補修が大変です。おかげさまで、田植え、稲刈りのときは多くの方に来ていただけるようになったのですが、みんなで畦道を歩いたりすると壊れてしまうので、木道などを作って対策しています。
 せんがまち棚田倶楽部で管理する土地は約10haですが、現在、ちゃんと生きた棚田になっているのは2haほどです。他は草刈りこそやっていますが、荒れたままです。今は水を引き込めないようになってしまっている部分もあるので、全てを棚田にすることはできないのですが、後世のため、少しでも棚田を増やそうと復元作業をしています。
 他県の棚田保全活動などでは、畦道を維持しやすいようにパイプなどを使って田んぼ間の水路を確保している例がありますが、私たちは違います。田んぼから田んぼに水が落ちる、昔と同じやり方にします。水が落ちる音も棚田の風景の一部と考えているからです。

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上倉沢公会堂

静岡県菊川市倉沢1121-1 <連絡先> TEL 090-3251-1390(事務局:堀)


NPO法人 せんがまち棚田倶楽部(えぬぴーおーほうじん・せんがまちたなだくらぶ)

- 略 歴 -

1994千枚田を考える会発足
1999静岡県棚田等十選に選定。棚田保全推進委員会と改称
2000全国田んぼの学校コンテスト金賞受賞
2005農山村協働部門最優秀賞受賞
2008静岡景観賞 水と緑のうるおい部門受賞
2009NPO法人せんがまち棚田倶楽部となる。
棚田オーナー制度開始
2010静岡県コミュニティ優秀賞受賞
2011あしたのまち・くらしづくり活動賞 振興奨励賞受賞


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