» 玉川きこり社(たまかわ・きこりしゃ)|ふじのくに ささえるチカラ

玉川きこり社(たまかわ・きこりしゃ)

関わりは更に深まり、ついに街中から移住
文化と経済の両輪で村と街を繋ぐ架け橋に


たまかわ・きこりしゃ

玉川きこり社


代表取締役 原田さやか


取材日:2016年02月2日

玉川を支える林業に着目し、きこりの会社を設立

 玉川きこり社は、安倍奥に惹かれた原田さやかさんが代表を務める株式会社。安倍奥とは、静岡市を流れる安倍川上流地域のことで、県境の梅ヶ島や井川、玉川など、6つの地域からなる山間地帯をさす。玉川の自然の鮮烈な美しさや、そこに残る古き良き生活の知恵に感動した原田さん。一方で、玉川は住民の過半数が65歳を超える集落がいくつか存在し、共同体維持も危ぶまれる問題を抱えていた。原田さんを中心に、地域に魅力を感じていた有志がその魅力を伝えたいと、2008年に玉川地区で「安倍奥の会」を立ち上げる。当時は情報誌「すろーかる」の編集者でありカメラマンだった原田さんは、何度も玉川に足を運び、地元主催の行事を手伝ったり、流しそうめん祭りなどのイベントを開催して、玉川の住民と親しみ、街の人々との架け橋になっていった。
 2010年には季刊のフリーペーパー「玉川新聞」を創刊し、編集長に。地域に残る史跡や資料の調査・紹介、地元の人の暮らしにある生活文化、今も残るレシピなどを記事にしている。玉川の人に「安倍奥の会」の活動やスタンスがしっかりと伝わったのは、この玉川新聞によるところが大きい。
 このように安倍奥の会でさまざまなことを行ってきたが、人口減少は留まらなかった。仕事をしながら、余暇で山村と関わることに限界を感じて、原田さんは玉川で起業することを決意する。
 旧玉川村は林業で栄え、今も人工林が8,000haあることを知った原田さん。「きこり=山村文化の象徴」と定義し、林業を通じた町づくりに可能性を感じた時、玉川きこり社は誕生した。「この魅力的な玉川や日本の農山村が、これからもずっと受け継がれていくための環境づくりを担い、自然と共生する暮らしの本当に豊かさを伝えていく」ことが最大のミッション。ボランティア活動から法人を立ち上げ、経済的にも玉川に根を下ろしたのは2014年3月31日。林業を土台に中長期計画を練り、自然と共生する豊かな暮らしを未来に描く。

玉川の風景きこりは山村文化の象徴丸太で作られた玉川きこり社の看板玉川きこり社 屋内


以下、インタビュー
玉川きこり社 きこりの仕事

玉川きこり社 きこりの仕事玉川きこり社 きこりの仕事玉川きこり社 きこりの仕事

1.玉川きこり社

さらに本気で関わるために
玉川に移住し法人を立ち上げる

 安倍奥の会で活動しているうちに、「自分もその場に身を置いて、もっともっと本気で玉川に関わりたい」と思って立ち上げたのが玉川きこり社です。玉川に通い始めたときは経済的基盤も街中にあり、引越までは考えていませんでした。が、徐々に知り合いができ、お母さん的な存在の方が増える中で、自然と共生する山の暮らしにますます魅力を感じて「住みたいな」と思う自分がいたのです。当時住んでいた街中のアパートは隣人との関係も希薄で、挨拶を交わす程度。ところが玉川では、体調を崩して元気がないと声をかけてくれたり、差し入れを持って来てくれるお母さんのような人がたくさんいました。会社を設立した1年目は勝手が分からず、とにかく忙しかったのですが、ずいぶんとお母さんたちに助けられました。玉川きこり社では、この人たちと協働して玉川の発展を目指したいと思っています。忙しい日々ですが、窓の向こうの川や山が本当に美しいので仕事がはかどります。

きこりじゅく

きこりじゅくきこりじゅくきこりじゅく

2.きこりと子育て

子どもが生きる力に触れる「きこりじゅく」も

 玉川きこり社の全体の事業テーマは「きこりと子育て」です。きこりは毎日山に出かけ、木を伐ります。自然の厳しさと優しさを知っているきこりの暮らしは、シンプルでありながら、人が豊かに生きるための本質がつまっていると思います。自然が遠くなってしまった子どもたちが、自然との共生を実践しているきこりに触れることで豊かに成長してもらえればと思い、毎月の「きこりじゅく」を立ち上げました。
 きこりじゅくが大切にしている「生きる力」とは、火をおこし、山の恵みを食べ、道具を使える「基礎力」や、何が起きても動じず、対応できる「応用力」、物事の本質を見い出すことができる「直感力」、相手を思いやり、周りの世界に想いを馳せられる「想像力」、自分の考えや想いを周りの人に伝えることができる「表現力」の5つです。ゆくゆくは「きこり保育園」も立ち上げられたらと考えているところです。
 子どもたちにもっと木に触れてもらいたいとの気持ちから、「きこりと子育て」をテーマに木のおもちゃも作っています。きこりパズルは自分で割って自分でパズルを作るアイデア商品。店舗に設置するキッズスペースの提案も行っています。

2016年開設予定のウイスキー蒸留所

玉川のお母さんたち独自で木のおもちゃも開発イベント出展、ブランディングやコーディネートも手がける

3.玉川きこり社の未来

地元や企業との恊働はさらに広がって

 玉川をどうブランディングしていくか、という視点から、玉川HP「玉川日和」や玉川マップを作成させてもらいました。玉川初の食品加工所「玉ゆら」も、ロゴなどをどう見せていけばよいのか、お母さんたちと話し合いながら、お手伝いをさせていただいています。2016年に玉川に開設される予定のウイスキー蒸留所では、外壁や内装に玉川の木を使用するための、木材コーディネートを行いました。
 出版社出身で林業に転身した例は他にはないので、今までの経験を活かしながら木材のブランディングやコーディネートをし、玉川の良さも伝えていけたらと思って活動しています。
 設立1年目は無我夢中でしたが、2年目を迎え、他の方や企業と協働することが増えました。実働2名の会社ですが、その周囲には本当にたくさんの方がいて支えられています。
 玉川は静岡駅から30分の身近で自然豊かな里山。でもまだこの魅力は十分に伝わっていないと感じています。自然との共生は子どもにいろいろな気づきを与えます。子育てがしやすい村であることも、もっと伝えていけたらと思っています。


玉川きこり社

静岡市葵区桂山712-4 054-292-2730


玉川きこり社(たまかわ・きこりしゃ)

- 略 歴 -

2008「安倍奥の会」発足
20143月31日、玉川きこり社設立
20154月 毎月第3日曜に開講する「きこりじゅく」がスタート
5月 「“きこり”と”花屋”で切り拓く里山の未来」が全国5ヶ所のみの国土交通省モデル事業に選定
20162月 「TOKYO×静岡の木」イベントを新宿パークタワーOZONEで開催


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