» 万年橋パークビル(まんねんばしぱーくびる)|ふじのくに ささえるチカラ

万年橋パークビル(まんねんばしぱーくびる)

楽しいことの実践になぜか結果がついてくる
ビルからのさまざまな発信が浜松の街中を元気に


まんねんばしぱーくびる

万年橋パークビル


代表取締役社長 鈴木基生(すずき・もとお)( 右)
建築家 彌田 徹(やだ・とおる)(左)


取材日:2016年03月07日

町の持つポテンシャルをさまざまな角度から発信

 浜松の中心地 中区田町にある万年橋パークビルは本来、立体駐車場だ。しかし8Fにはイベントスペースがあり、時には子どもの自転車初乗り教室が行われ、1Fの「黒板とキッチン」では頻繁にワークショップが開催されている。ビルが人を巻き込んで町づくりの機能を持ち、近隣の商店街を含めた広範な情報発信を行い、しかも駐車場としての経営が成り立っているのは全国的にも希有な例。誰もが知りたい、中心市街地の活性化。しかし社長の鈴木基生さんは「狙ってやったことではない」と話す。「好きなことをやっている」と。
 郊外型の大型店舗が増え、全国でシャッター商店街が増えていることを問うと「シャッター商店街の何がいけないの?」と予想外の答えが返ってくる。その後「でも町にはすごいポテンシャルがある」と話は続く。ほとんどファストファッションで事足りていると思っている人でも、生活の15%くらいはこだわりたい部分があるのではないか、と鈴木さんは考える。商店街の専門店はそのこだわりに十分応えられる力を持つ。それを、まだ知らない人に伝えたい。
 例えば田町にあるゆりの木商店街は100年以上続いている老舗が約80軒中14軒もある。長年培った店主の持つ知識は深く、話の引出しは豊か。『ゆりの木のヒミツ』は、まるで店主に話しかけたかのように、商店街の魅力を垣間見ることができるショップカード集だ。店主だけが知っているヒミツが46店舗分そろい、思わずめくって読みふけってしまうカード集は、建築家の彌田徹さんが制作チームのリーダーとなって制作。店主の個性的な一問一答は読み合った店同士の親交にもつながり、店主が語らうネイバーズデイの構想へと展開されていった。
 町づくりはひとりではなく、いろいろな人が集って得意なパートを請け負えばいい。鈴木さんはそれを「片手を貸してくれる人との巡り合わせを待つ」という。そのおおらかな姿勢に惹かれ、周囲には専門家から学生まで、多くの人が集まっている。中でも隣りにいる彌田さんは、鈴木さんの「これどう思う?」というお題に想定以上の答えを出して実行するパートナー。浜松市の街中、このふたりの周りでおもしろさはますます加速している。

以下、インタビュー
鈴木基生(すずき・もとお)さんと彌田 徹(やだ・とおる)さん

ゆりの木通り商店街のショップカード手作り品バザール黒板とキッチンには様々なフライヤーも集まる

1.ゆりの木通りのヒミツ

魅力を伝える”手段”についてはよく考える

 (鈴木)田町パークビルの社長の職に就いたのは10年前のことです。就任してから約1年間、町を見ているうちに、ゆりの木通り商店街にはすごいポテンシャルがあることに気づきました。東海道に位置して、100年以上続いているお店がざらにある。深い専門知識を持つ店主さんがいたり、ある伝統産業の老舗企業が全国で最初に取引を開始したお店があったりします。
 郊外型の量販店を否定するわけではありませんが、「○○だけは、町の専門店でお店の人の話を聞いてから買いたいな」という分野が、誰にだってあるのではないでしょうか。僕はだから、専門店には後世に残っていかなければならない責務があると思っています。その専門店にめぐりあっていない人に、どうすれば伝わるだろうかということはよく考えています。
 (彌田)鈴木さんからゆりの木通り商店街のショップカードを作ろうという話を持ちかけられた時、内容はありきたりにはしないと決めました。
 (鈴木)驚異的に面白いカードですよ。最初は作ってほしいものとあまりにも違っていて「何これ?」と言ってしまいました。想定外の面白さです。
 (彌田)お客さんが持って帰りたくなり、店のことが伝わるカード、という出発点から、店主だけが知る”ヒミツ”を網羅するものになりました。
 (鈴木)実際に店主を知ると「あの人がこういうことを書くんだ…」と思ったりして、回答に更に深みが増します。

zingを作るワークショップ

包丁を制作するワークショップ海外の観光客にも喜ばれる街中ガイドツアー

2.「黒板とキッチン」、「hachikai」

町の活性化は外に開くことから

 (鈴木)彌田さん以外にも、得意分野を持つ人にいろいろなことをどんどんお願いしています。万年橋パークビルのブログは高校生や若いイラストレーターが更新していますし、1階の「黒板とキッチン」というスペースは設計・建築やイベント企画を手がける「(株)大と小とレフ」(鈴木一郎太さん・大東翼さんの共同経営)に企画運営を任せています。
 彌田さんも、「大と小とレフ」も、外に向かって開いています。よく町づくりには「若者・よそもの・馬鹿者」が欠かせないといいますが、受け入れる土壌がないと、新しい風が入って来にくいところがあるかもしれない。
 (彌田)例えば町おこしで「歴史がある町」といって、老舗ばかりをフィーチャーしてしまうと、若者や新しい企業は入りづらくなります。
 (鈴木)そうではなく、むしろ新旧取り混ぜ、いろいろな立場の人が共存するためにはどうするかを考えた方がいいと思います。万年橋パークビルのイベントは、臨床哲学の講演会があると思えば、近くの雑貨屋さんの1周年に合わせた雑貨市が開催されたり、カレーのワークショップがあったり、混沌としていて面白いですよ。

お月見の会

ネイバーズディ

3.学生と連携「お月見の会」そして…

何度も人が来る商店街になるためには

 (鈴木)今、学生とも連携していろいろしています。“まちなか部活”といって、高校生の部活のフィールドとして場を提供したり、昨秋は静岡文化芸術大学の学生さんたちに、授業の一環として、商店街の年中行事であるお月見の会の企画から運営までを実施して頂きました。山にすすきを3000本取りに行ったりもして、学生が主体となって動き、予想外なこともありましたがなかなか良かったです。
 (彌田)店主同士が朝食を食べながら語らう「ゆりの木ネイバーズデイ」など、商店街の結びつきが強くなるイベントも実施しています。
 (鈴木)店主同士が親密になることで、商店街の魅力は増すと思います。その上で、商店街や浜松城、鴨江アートセンターに地元アーティストの作品を飾った「アートルネッサンスin浜松」などのイベントを行うと、そのイベントに来て商店街のファンになり、その後何度も遊びに来るという人が現れます。そういう人が増えることが、町を元気にするのではないかと思っています。


万年橋パークビル・黒板とキッチン

浜松市中区田町327-24 053-452-3845


万年橋パークビル(まんねんばしぱーくびる)

- 略 歴 -

2010国際ピアノコンクールに合わせてガイドツアー実施(以後毎年実施)
2011  万年橋駐車場8F部分にフリースペースhachikai設置
たけし文化センターinfo lounge開設
2014  黒板とキッチン開設
2015  ネイバーズデイ実施
2016“まちなか部活”プロジェクト
駐車場の一部の用途変更を計画中


一覧に戻る(TOPへ)