» 大村 由実(おおむら・ゆみ)|ふじのくに ささえるチカラ

大村 由実(おおむら・ゆみ)

絵本のつながりから地域交流の輪を広げる
ママさんが集まり、文化活動が動き出す


おおむら・ゆみ

大村 由実


えほん文庫 主宰


取材日:2011.11.25

人見知りだった主婦が人の輪を作る側に

 大村由実さんはかつて銀行に勤めるOLだった。自分が活躍できる場を求めて7年で退職、朗読を吹き込むボランティアとなるために、東京の俳優養成機関の門を叩いた。静岡に戻って朗読と演劇を掛け合わせた「朗演」という語りの世界に飛び込む。10年間活動し、出産、子育ての過程で語り手としての活動はいったん休止した。しかし、自分の活動場所を求める思いは消えず、自宅を新築するにあたって夫婦の夢としていたホールを作り、絵本の貸し出しやお話会ができるスペース「えほん文庫」を始めることにした。
 その時期と重なって第3子の「ごうちゃん」を授かる。ごうちゃんはダウン症という障害を持っていたが、くしくもそのことが、えほん文庫の成長を加速させることになった。
 舞台に立って「語り」までする度胸とはうらはらに、由実さんは人見知りだった。ママ友達はなかなかできず、孤独な子育てをしていた。ところが、ごうちゃんの生誕によって、ダウン症の子を持つ親との親密なつきあいが始まり、由実さん自身も、とりまく環境も大きく変化しだした。
 えほん文庫のオープン日と「お話会」を通していくつものママさんサークルが立ち上がる。無農薬野菜を育てる農家さん、紙芝居の舞台を作る木工房など、違う分野の人とのふれあいへと連鎖する。人の輪の外にいることが多かった人間が、いくつもの人の輪の中に入るようになり、やるべきことが増え、やりたいことも増えていった。ついには仲間と力を合わせて300人規模のチャリティコンサートを催すまでに至る。「絵本を中心にした地域の交流の場としたい」という当初の考えは、由実さん自身も驚くようなスピードで現実化し、実績を積み上げている。





以下、インタビュー

1. えほん文庫の立ち上げ

よく知らずに動き出したのに望み通りの姿に
ふれあう経験が偏見のない人に育てる

 笑っちゃうんですが、当初私は自宅を使って本を貸し出す「家庭文庫」がどういうものかも知りませんでした。そして家庭文庫の先輩の方々に教えを請いに回りました。絵本は前から好きで250冊ほど集めていたのですが、読み聞かせ養成講座に入って絵本リストを見て買い足したりしました。財団の助成を受けて150冊調達させてもらい、移動図書館から毎月100冊ずつ入れ替える手はずを整え、えほん文庫が立ち上がりました。現在1100冊の絵本があります。目標は2000冊です。
 ダウン症の子を授かったこともあって、障害ある子もそうでない子もわけへだてなく参加するよう望みましたが、何も言わなくても子供たちは自然にとけこんでいます。私が望んだとおりの姿です。子供だから障害のことをよくわかっていないのかもしれません。しかし後になって障害のことを理解したとしても、こうした幼少のころの経験があれば、偏見なしにお付き合いができる人間に育つと思っています。

2. ママのつながりの広がり

連動し、拡大していく講座やサークル活動

 人見知りの私は人の輪に入っていくことができなくて友達づくりにずっと苦労してきました。ところがダウン症の子を持つ親達と知り合ってから一気に交流が広がりました。同じ思いを持つ人たちはすぐにわかりあうことができると実感しています。ママ達が集まると講座やサークル活動が自然発生的に始まります。聖隷クリストファー大学の学生ボランティアまで来てくれるようになり、えほん文庫を通してのつながりが生まれてきました。




3. チャリティコンサート

外にあふれ出すママさんパワー
準備期間たった3週間でイベントを成功させる

 東日本大震災が起き、何か自分達でできることがないかと摸索していたとき、ご近所のピアノの先生から「えほん文庫でチャリティコンサート開こうよ」と提案されました。それはいい、とあちこちに出演を打診すると「私も私も」となってすごい数になりました。キャパシティが足りなくて困っていたら聖隷クリストファー大学が会場を貸してくれることに。250人収容できる場所を提供してもらいましたが、観客数といえば開催日数日前で70人ほどの申し込みでした。そこからママ達が声かけに動き出します。ふたを開ければ当日の観客は300人。36万円を超える義援金を集め、あしなが育英会に渡しました。ママ達の力で震災後すぐに企画して3週間でそこまでできちゃいました。
 次回は2012年3月に浜松市雄踏文化センターで開催します。同じ趣旨の会を継続してもらえるならば全面的に協力したいと言っていただきました。主導的に運営をささえてくださる方がいて、つながりは広がり続けています。

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えほん文庫

浜松市北区三方原2160-1 TEL 053-439-3810


大村 由実(おおむら・ゆみ)

- 略歴 -

2007えほん文庫をオープン。絵本の貸し出しとお話会を始める
2008めぐみ助産院主催「赤ちゃん会」えほん文庫にて開始
2009聖隷クリストファー大学の学生ボランティア受け入れ開始
2010子ども図書館応援団のお話会開催
2011第1回紙芝居フェスティバル開催
東日本大震災 震災孤児応援チャリティコンサート 「絆~つなげよう 未来の日本の子ども達へ~」を開催


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