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内藤 恒雄(ないとう・つねお)

誇り高い日本の財産、手漉き和紙
技術を伝承し、和の文化を守る


ないとう・つねお

内藤 恒雄


柚野手漉和紙工房 主宰


取材日:2011.11.29

ジャパンブランド「手漉き和紙」の技術、誇りをもって守り続ける

 柚野手漉和紙工房は富士山の伏流水が豊富な富士宮にある。東京出身の内藤恒雄さんがここに工房を開いたのは35年前だ。以来、書家や版画家、文化財修復家が欲する手漉きの和紙を提供し続けている。
 内藤さんが和紙の世界に入ることになったきっかけは、大学4年の時のカナダでのホームステイ。日本から離れて3ヶ月滞在するなかでジャパンブランドへの誇りが芽生えた。帰国後、たまたま見ていたテレビ番組で手漉き和紙の存在を知る。下町育ちで職人の仕事を見てきた内藤さんは職人へのあこがれがあった。「これだ」と天啓を得たように動き出す。国内3か所で6年間みっちり修行し、28歳で富士宮に工房をかまえた。東海道にあり、日本を象徴する富士山の見える場所、和紙に必要な軟水を確保できること、が大きな理由だ。
 柚野和紙の特徴は、何と言っても天然木の板に貼り付けて干す「天日干し」。金属板を使った機械処理全盛の中で、天日干しを貫いているのは国内でも数か所しか存在しない。内藤さんは自分の和紙作りにおいて「伝統的かつ正当的」であることにこだわる。伝来するやり方でも不合理な場合はためらわずに改善するが、和紙の本質を損ねることは絶対しないという。三椏(みつまた)、楮(こうぞ)、雁皮(がんぴ)といった和紙本来の原料を使うなら、最良な仕上がりとなる天日干しは譲れないと考える。
 手漉き和紙作り30年を経過したとき、「駿河半紙技術研究会」を立ち上げた。自らが円熟期に入り、和紙の文化を次世代に伝えていかなければならないと考え始めたからだ。実技を重視し、資料に留まらない生の和紙作りをしてもらう。和紙の啓蒙では海外にも出かける。内藤さんのバイタリティは健在だ。





以下、インタビュー

1. 書画の作家をささえる

時代の変化とともに、使う場面も和紙も変わる
新たな紙を作り続ける和紙職人の腕

 書家の人たちは紙の好みが違うもんで、にじみぐあいや表面の質感など細かい注文を出してきます。それにこたえるのが職人の仕事です。和紙は1300年以上続くすばらしいものですが、同じものを作り続けてきたわけじゃない。平安時代は貴族向けの高貴なもの、鎌倉時代に武士文化に合わせ、江戸時代には庶民も使うようになった。時代の変化に合わせて和紙は変わってきた。それを職人が担ってきたんです。
 今は今の時代に使ってもらえるものを作らなければならないんですよ。やったことがない注文を受けるときは、いくらかかるかなんて計算しません。やってみなければわからないもんで。作れば技術の向上になるし、思い通りにならなくても、別の作家向きの紙になったりするんです。そうやって作ってきたから35年も続けることができたと思ってます。作家は使う紙を明らかにしたがらないもんで、名前を出せないけど、書家、版画家、日本画家、洋画家さんなどとの取引は40件になります。

2. 技術の伝承

駿河半紙技術研究会を立ち上げ

 還暦手前の59歳になった時、和紙作り30周年を迎えました。ひとつの区切りと思って立ち上げたのが駿河半紙技術研究会です。様々な方に賛同してもらい会員30名でスタートし、現在は50名になっています。3ヶ月に1回のペースで実技研修会を開いています。実際に和紙を作る工程に参加してもらいます。誰でもやれるようにアレンジした作業ではなく、きちんとした作業をそのままやることを重視してます。筋のいい人もいますよ。




3. 海外にも和紙を伝える

世界的に手漉き技術の存続が危ぶまれている
和紙の優れた技法を教えてお役に立ちたい

 国際交流基金の支援を受けて、海外にも行くようになりました。以前ドイツに行きましたし、今年(2011年)は9月にフランスに行っています。海外でも手漉きの紙はあります。今は主に文化財の修復の需要です。ところが、やっぱり手漉き紙の技術を継承する人は減り続けていて、向こうの文化庁のようなところは危惧してるんですね。国内の修復家を通して私に声がかかりました。
 現地の作業工程を見せてもらいましたが、やり方はまったく違う部分があります。日本の手漉き和紙の質とそれを実現する技術は世界でも最高レベルのものだと自分は思っているもんで、作業工程の一通りはきっちり説明してきました。原材料も違うし、伝統を重んじる国だもんで、どこまで参考にするかはわかりません。ただ、もっと知る必要があると思ったのか、次はフランスの方からこちらに来ることになっています。今後も国際交流には前向きに取り組んでいくつもりです。

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柚野手漉和紙工房

富士宮市上柚野907-1 TEL 0544-66-0738


内藤 恒雄(ないとう・つねお)

- 略歴 -

1976静岡県富士郡芝川町上柚野にて工房設立
1991スイス、バーゼルでの国際紙会議に出席、同時にドイツにて和紙のワークショップを開催
1994天皇、皇后両陛下、静岡県行幸の折に和紙をお買い上げ頂く
1995皇后陛下ご下命の和紙を宮内庁にお買い上げ頂く
1997富士ロゼシアターにおいて、20周年の個展を開催
2000国際交流基金の助成を受けてドイツ訪問 手漉き和紙の実演、講演のほか、ワークショップ開催
2003第58回国民体育大会NEW!!わかふじ国体の表彰状を静岡県に納める
2006東京 品川「ギャラリーU」で独立30周年記念展を開催
2007駿河半紙技術研究会を設立
2011みしまプラザホテル・ギャラリープラザにて独立35周年記念展を開催


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