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アトリエみるめ(あとりえ・みるめ)

存続危機を乗り越え生まれ変わった小劇場
アマチュア劇団を育てる拠点を目指す


あとりえ・みるめ

アトリエみるめ


一般社団法人 静岡アート支援機構 代表 渡辺亮史


取材日:2011.12.1

「寿町倉庫」から芸術文化の拠点として新たにスタート!

 複数のアマチュア劇団が公演や稽古場として利用していた小劇場が静岡市の郊外にある。元メッキ工場の建物であり「寿町倉庫」という名で2001年から10年間使用されていた。
 場所を賃借して提供していたのは市内の企業。2階を社内書類倉庫として利用しつつ、1階を無償で劇団向けの貸しスペースとしていた。しかし、経済的な理由から2010年9月に支援停止となる。
 寿町倉庫は市内には数少ない地域に密着した劇場だった。地元の劇団と地域が演劇でつながってきた、劇団の活動拠点というべき場所の存続危機に立ちあがったのが、当施設で活動していた劇団渡辺の代表・渡辺亮史(あきふみ)さんである。
「10年間、企業がご支援くださっていた時期を“ゆりかご”のようなものと捉え、この場所をさらなる発展の場とするべきだと考えました」と渡辺さん。先にここで活動していた劇団らせん劇場と協力しながら、「ブキッチョプロジェクト」と称した存続運動を始めた。
 存続を支援する会員募集から始まり、県の機関や財団法人にも応援を求めた。東日本大震災の発生で、支援活動の優先順位が変わったり、自粛ムードの影響が出たりして苦境に立たされた時期もあったが、最終的には地域の助力が実を結んだ。2011年4月、晴れて自主管理となり運営法人を「静岡アート支援機構」として登記。渡辺さんが代表理事に就いた。
 施設の名も変更した。静岡の方言である「みるい=若い」と芽、そして「社会をみる目」とかけて「アトリエみるめ」と命名。「まだやわらかい若葉が、ここで茂っていくように」との想いが込められている。
 今も小さなアートの拠点として、温かい明かりを地域に灯す。





以下、インタビュー

1. 劇団渡辺代表・渡辺亮史

大学のサークル活動が母体となった劇団
他劇団からの声掛けで寿町倉庫の利用開始

 演劇の道は大学のサークル活動から始まりました。やっていくうちにどんどんのめり込んでいき、内定していた就職先も蹴って演劇一本にしぼりました。アマチュア劇団員のほとんどが他に仕事をしながら続けており、僕もそのひとりでしたが、生活第一・演劇第二にはしたくなかった。演劇を第一に考えたかったのです。今思えば若気の至りですね。
 大学を中退後、静岡県舞台芸術センター(SPAC)や照明会社などでアルバイトをしながら、芝居の稽古もしていました。他のメンバーは大学サークルで知り合った者たちが多いです。2004年に劇団渡辺として旗揚げして地道に続けていくうちに、寿町倉庫で活動していた劇団らせん劇場さんから「一緒にやらないか」とお誘いを受け、2008年から利用し始めました。寿町倉庫は元メッキ工場の2階建てということで天井が高く、資材搬入時に車両ごと乗り入れられるなど、自由度の高さを感じました。

2. ブキッチョプロジェクト

体に染みこませて演じられる手強い空間

 寿町倉庫は舞台芸術を披露する者として、手放したくない場所でした。アマチュアの場合、主に公民館やどこかの会議室を借りて稽古します。野外などで公演するときにその成果が100パーセント出せるかというと、難しい。稽古場の空間に制約があるためです。天井高が4メートルもあり、走りまわれる、声を張りあげられるこの場所で稽古できるのは、役者にとって望ましいことでした。公演の際はお客様との距離が近くなり、演じながらお客様の反応を見られるのが醍醐味です。
 ここを訪れた方に「手強いけれど、とてもいい空間だね」と、言われることがあります。一見粗野で殺風景なこの場所で創られたものは、劇中の歴史や人々の変遷を感じさせたり、味を感じさせたりしてくれる。演者としてこのうえない舞台であり稽古場です。10年間支援してくれた企業への感謝もあり「ブキッチョプロジェクト」を開始して、私が賃借することになりました。

3. アトリエみるめの可能性

潜在能力を最大限に引き出すための改名
静岡から全国、世界に発信する創造の拠点に

 寿町倉庫を現在の名称に変えたのは、以前とはまた違う流れを作りたかったからです。もっといろんな人たちに広く利用してもらって、もっと力のある場所にしたい。この空間はそうなる可能性を持っていると確信していました。自分たちがやりやすい場所だから法人まで作って、お金を集めて存続させるのか?という自問もあったのです。
 アトリエみるめの目的は演劇のみならず音楽や美術、映像といった芸術の拠点として機能すること。「あの作品の元をたどると、アトリエみるめで作られたものだった」というような。ここを芸術の発信地にしたいのです。
 これまで常連の2つの劇団以外にも2つのSPAC県民劇団、大道芸のステージ企画、インディーズ映画の撮影やシンポジウムなどが行われてきました。まだ半年足らずですが、活動の手ごたえを感じています。
 最低10年の施設運営計画のもと、町の劇場文化を活性化させる場所になるよう期待しています。

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アトリエみるめ

静岡市駿河区寿町12-21 TEL 054-289-1161(一般社団法人 静岡アート支援機構)


アトリエみるめ(あとりえ・みるめ)

- 活動実績 -

2002企業がアマチュア劇団支援のために寿町倉庫の部分的開放を開始
2008劇団渡辺が寿町倉庫の利用開始
2010寿町倉庫の企業による使用中止決定
寿町倉庫存続運動「ブキッチョプロジェクト」の開始
2011施設名を「アトリエみるめ」とし、運営法人を登記


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