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大谷 純應(おおたに・じゅんのう)

地域住民の表現の場としてお寺の境内を開放
ふれあう機会が地域の文化創出の助力になる


おおたに・じゅんのう

大谷 純應


法多山尊永寺 住職


取材日:2011.12.14

星空観察、雑貨・食品マーケットなど寺の境内を開放

 聖武天皇時代の建立とされる名刹・法多山尊永寺(以下法多山)。住職の大谷純應さんは仏教行事のみならず、地域の人々と共にさまざまな活動をしている。春の収穫祭のような伝統行事とは別に、大谷さんが地域のために考案したものや、市民が発案した数多くのイベントに境内を開放し、実施しているのだ。
 一例が秋の夜に本堂で開かれる、星空観察会「星満夜(ほしみつよ)」。山頂を切り開いて作られた本堂は視界が広い。大谷さんは以前、夜間照明のテストをするため本堂前の照明をすべて落としたとき、ここから見る星空の美しさに気づいて感動したという。「多くの人にこの星空を楽しんでもらおう」と考え、全国で星空観察の推進活動をしている団体に協力を求めて開催してきた。
 市民発信の行事で代表的なものが「コトコト市」。掛川や袋井の雑貨店、カフェ経営者などが集い作家の作品や食品を展示・販売するマーケットである。当初は主催者の雑貨店周辺で開かれていたが、規模の拡大によって、より広い土地を求めた主催者が法多山を訪れ、大谷さんとの話し合いの末に開催が実現した。そこへ彼自身が発案に関わったカフェも出店している。
 他にも書道展や音楽ライブなどの催しが、行政主導でなく、住職と市民の直接交渉及び企画運営によって開かれている。静岡の寺院としては珍しい。「私は寺のロケーションとそこで流れている時間や空間を提供しているだけで、これが寺の本来の役割だと思っています」と大谷さん。境内がコミュニティの中心として機能していた、かつての寺の姿を取り戻したいという想いがある。
 観音信仰の地として名高い法多山は、市民の憩いとふれあいの場、文化を育てる土壌としての役割を担っている。





以下、インタビュー

1. 星空観察会・星満夜

法多山本堂のロケーションを活用
自分が感じた美しさをよりたくさんの人々に

 最初は本堂から見る夜空に感動して、一緒に楽しんでもらおうと思ったのが星満夜のきっかけです。以前からご縁のあった「浜松星を見る会」の方にご協力をいただいて始めました。するとその方だけでなく近隣のアマチュア天文家の方々や研究会の方まで協力して、天体望遠鏡も十数台もちこんでいただいたのです。訪れた人たちに星の解説もしてくださり、観賞会予定が観察会に変わっていきました。ニーズとシーズが一致して良き交流の場になったと思います。その間ワークショップやカフェも開くようになりました。
 私は住職としての職務以外に、観光協会など市の機関でも活動してきました。カフェは市の事業の一環で立ちあげ、イベントに参加させています。ケーキ作りを担ったパティシエがそこでご縁のあった方に依頼され、パウンドケーキ専門店をプロデュースしたことがありました。このように法多山での交流が他に広がっていくことも私の願いです。

2. 各々の世界を広げるための土壌

法多山を中心に根づきはじめたコトコト市

 元々コトコト市は、主催者の女性が経営する掛川の雑貨店周辺で行われていました。2011年秋の開催で10回目を終えたのですが、法多山での開催は4回目から。規模が大きくなり、もっと広い場所を探し求めてここに行き着いたようですね。
 地域の人たちに楽しい時間を提供したいという主催者の想いにいたく感心したのを覚えています。彼女たちのような考えを持つ人が、自分の世界を広げるためにこの場を使ってほしい。ここを拠点に、地元の市井の人に文化を創っていってほしい。




3. 従来の寺の役割への回帰

寺が社会にとってどうあるべきか
地域社会と関わる本来の姿を取り戻すための試み

 100年くらい前まで寺はコミュニティの中心であり、境内では芝居がかかったり、市場を開いたりしていました。戦後、社会環境が変化するなかで、いつしか寺は地域と関わろうとする意識を失っていったのではないでしょうか。かつての住職は人々から尊敬される存在でしたが、それは博識なことや厳しい修行に耐えているからではなく、地域のなかで人々と一緒に歩んでいたからではないかと感じています。
 法多山のような寺を増やしていきたいと思っていますが、私は支えられている側の立場であり、支えてくれているのはコトコト市のような、ここへ集う彼らです。彼らが枝葉を大きく伸ばしていくための肥沃な土壌が法多山のような寺であればいい。そのために参道は歩きやすいか、景観を損なうものはないかなどを普段から気配りするのも僕の務めですね。肥えた土地であれば、木々は大きく育っていくはずですから。

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法多山尊永寺

袋井市豊沢2777 TEL 0538-43-3601


大谷 純應(おおたに・じゅんのう)

- 活動実績 -

2005紫雲閣でコトコト市開催(以後毎年開催)
2009本堂で星満夜開催
2011書道家石田不空の書芸展開催


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