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雛のつるし飾り工房 絹の会(ひなのつるしかざりこうぼう・きぬのかい)

100年以上続く稲取の雛のつるし飾り
本物の形と心を守って大切に残していく


ひなのつるしかざりこうぼう・きぬのかい

雛のつるし飾り工房 絹の会


代表 森 幸枝


取材日:2011/12/12

脚光を浴びた観光資源だからこそ、きちんとしたものを後世に伝える

 伊豆稲取の雛のつるし飾りは江戸時代から伝わる風習で、娘の健やかな成長や幸せであれと願う事柄が具体的な飾りになっている。しかし現存する古い飾りは少なく、飾りの作り手の方々も高齢になり、この風習の将来が不安視されていた。
 そのことから平成5、6年と11、12年に地区の婦人会が講習会を開催。古い飾りを参考に型紙を復元させ、古老を招いてなんとか制作指導を受けることができた。町の文化祭に出展した作品は大きな話題となった。これに着目した稲取温泉旅館協同組合が平成10年『雛のつるし飾りまつり』と題したイベントを開催したところ、親の愛が見える優しい飾りと大変な評判を呼んだ。
 以来、雛のつるし飾りまつりは伊豆の春を告げる代表的なイベントに成長したが、つるし飾りの本来の意味から外れたものや、観光客目当ての輸入品や粗悪品も出回るようになっていた。
 森幸枝さんはつるし飾りの普及に携わるうち、稲取のつるし飾りを文化として伝承していくには、昔から伝わる形と心をきちんと残すべきだという思いを強く持つようになった。そこで意を同じくする仲間と「絹の会」を結成して工房を開き、口伝でしかなかった飾りの作り方や、古い飾りの謂われを一つひとつ調べて文章化した。絹の会のつるし飾り作りは、材料の絹地の染めや文様などにこだわり、色合わせに心を配る。森さんや仲間が丹念に縫い上げたつるし飾りは、着物や帯と同じような日本伝統の美と気品を湛えている。工房への来訪者に形の由来を語りながら、その中に込められた親子の情愛を感じてもらえるような人形作りをめざし、稲取のつるし飾りを一人でも多くの人に伝えたいと森さんは考えている。





以下、インタビュー

1. つるし飾りへの思いと出会い

婦人会での活動から保存会の仲間として
昔からのつるし飾りの意味をひもとく

 子供の頃、節句の時期に友達の家に行くと、つるし飾りがありました。とても羨ましかったですね。もともとつるし飾りは、娘が生まれると、健やかに育つようにと母親や祖母、近親の人が一つ一つ縫い上げて初節句に贈ったというものです。私の家は母が裁縫が苦手だったのか、つるし飾りがありませんでした。三人姉妹だった私の家には着物地がたくさんあったので、いつかこれを使って作ってみたいと思っていました。
 婦人会で先輩方に作り方を教えてもらい、第1回目の雛のつるし飾りまつりの後に保存会ができたので、それに参加して本格的につるし飾りを作るようになりました。保存会は、当時日本各地の雛の研究をしていた藤田順子先生の助言があってできたんです。先生との出会いが、私がつるし飾りに本気で関わるきっかけになりました。稲取のつるし飾りを文化として伝承するために、昔の形をきちんと継承することが大事だという先生の言葉があったんです。

2. 飾りの形と込められた意味

難が「さる」、薬袋や厄除けの「三角」、
長寿の「桃」

 県内外からいろんな飾りが持ち込まれ、中には稲取のつるし飾りの評判を落としかねないものもありました。放置できないということで保存会や旅館組合の制作室ができたのですが、私は古いつるし飾りの形を調べ謂われや意味、ごろ合わせを解いてみました。飾りに込めた願いや思いを知り、きちんと伝承していきたいと考えたからです。稲取に残るほとんどのつるし飾りに、桃(長寿)、さる(難が「さる」)、三角(薬袋、厄除け)があります。この三つが基本ということもわかりました。



3. 絹の会で伝えていくこと

祈りを込め丹念に縫い上げるつるし飾り
手芸ではなく伝承文化として取り組む

 絹の会で心がけているのは、「見て綺麗なもの」ではなく、「見てほっとするもの」「ずっと見ていても見飽きないもの」を作るということです。絹布には、日本の伝統の美しさと気品があります。ですから絹布にはこだわります。布集めは苦労するけれど、京都、奈良や丹後にも出かけて探します。今では、先方さんから情報を頂けるようになりました。
 審美眼を養うため、神社、仏閣や、美術館めぐりもします。つるし飾り発祥の地として、本物にこだわるべきだと思います。稲取のつるし飾りの品質を落とさずに、伝承していかなくてはいけない、それが絹の会の役割だと考えています。
 旅館組合の主催で、毎年コンテストがあるのですが、全国各地から器用に美しく作られた作品、針仕事の達人の作品が出品されます。私達も参加して、地元としてそれらに引けを取らないよう、日頃から研鑽して町内を盛り上げるようなつるし飾りを作っていきたいと思っています。

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雛のつるし飾り工房 絹の会

賀茂郡東伊豆町稲取429 TEL 0557-95-0722


雛のつるし飾り工房 絹の会(ひなのつるしかざりこうぼう・きぬのかい)

- 略 歴 -

1993婦人会でつるし飾りの講習会を実施
1994婦人会でつるし飾りの講習会を実施
1998旅館組合が第1回雛のつるし飾りまつり開催(富岡邸)
つるし飾り保存会ができる
1999つるし飾りの形の意味、謂われを調べてまとめる
2000旅館組合の制作室で活動した仲間で絹の会を結成する
2002旅館組合の「文化公園雛の館」がオープン
2004雛の館向い庵オープン(富岡邸終了)
2007絹の会の工房「雛のつるし飾り工房」を開く


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