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河村 愼太郎(かわむら・しんたろう)

延べ数千人の市民合唱団に『第九』を合唱指導
ドイツ語の壁を越え歌い上げる感動を共に


かわむら・しんたろう

河村 愼太郎


ふれあい音楽運営委員会(第九を歌う会)会長


取材日:2011.11.20

人との出会いを大切にしながら、ベートーヴェンに挑む市民の大合唱団を指導

 毎年12月、日本各地でいったい何人の善男善女がベートーヴェンの『第九』を歌うだろう。日本ほどこの曲が愛される国は他にないそうだ。
 平成3年、静岡県旧清水市でも、文化の振興と活性化を図る目的で「清水市民によるベートーヴェンの第九大演奏会」が開催された。演奏する楽団や会場などの手配に苦心したが、みんなで第九を演奏してみようという熱意で取り組んだことが実を結んだのだ。それが毎年回数を重ねていつの間にか清水の師走のイベントとして定着した。清水市と静岡市が合併し、タイトルが「市民による歓喜の歌大演奏会」に変わっても続けられ、平成23年には21回目を迎える事となった。
 当時、旧清水市内の校長で音楽に造詣の深かった河村愼太郎さんは演奏会の準備段階から関わることになり、自らも合唱団に混じりテノールのパートを歌った。この合唱団には学校の合唱部のOBや公民館などで活動していたコーラスグループ、とにかく第九を歌ってみたいという人たちが集まってきて、200人から300人の大人数となる。
 合唱の基礎がある人ばかりではない、ドイツ語も楽譜を見るのも初めてという人々に、河村さんは優しく楽しく指導する。第九の歌詞となったドイツの詩人シラーの詩、それをベートーヴェンがこの曲に付けたこと、試練を乗り越えて得る歓びや自然や神への感謝の気持ちを一緒に歌い上げていく感動を本番のステージで共有できると、毎年一人ひとりに熱く語りかける。
 河村さんは初心者のための特別練習や男声指導を延べ10年以上続けてきた。同じように第1回以来ずっと女声指導をしている副会長の山田望さんと共に、毎年、素晴らしい市民大合唱団を晴れのステージに送り出している。


以下、インタビュー

1. 第1回大演奏会

ブラスバンドと旧清水市庁舎の階段で
228名が同じ感動を味わった第1回

 第1回目は清水にオーケストラがなかったので、ブラスバンドで名を挙げていた当時の東海大学第一高等学校に演奏をお願いしたんですよ。ベートーヴェンの第九を、高校生を指導していらした榊原先生や編曲者に頼んでブラスバンド用に編曲するんですから、それはもう大変な作業です。
 一番苦労したのは演奏する生徒だったかもしれません。初めてだというのに合唱には228名の市民が参加しました。旧清水市庁舎の階段を雛壇にして合唱団が並び、その前に東海一高のブラスバンド、そして駐車場にパイプ椅子を並べて客席を作りました。音響は、ボーボーと風の音をマイクが拾ってしまってどうしようもなかったですけれど、歌った合唱団も聴いてくれた人も、演奏した高校生も、準備に力を尽くした社会教育課の職員さんも、この演奏会で同じ感動を味わったんじゃないかと思います。そんなことがあって、2回目からは清水文化センターの大ホールでやることになりました。

2. 第九への挑戦と達成感

「苦しみを乗り越えて歓びへ」というテーマ
聴いていた人が歌う人になる第九の魅力

 10年、20年と続けている方もいますが、全く合唱をやったことがないという新しい方が毎年、30名から50名ほど入ってきます。最初はドイツ語で何が何だか、楽譜を見てもわかりません。歌詞のテーマも「苦しみを乗り越えて歓びへ」という感動的なものですが、高揚していく気持ちを歌で表現するには5年くらいかかります。1年目2年目はついていくのがやっとです。
 私は練習の時に、初めて挑戦する方は前の方にいらっしゃいと言います。遠慮して後ろの方にいると、適当に口をパクパクするだけで練習が終わってしまう。前にいれば後ろから先輩たちの声がガンガン後押ししてくれます。1年目の方も何年も続けている方もそれぞれにすごい達成感を感じられるのが第九ですね、歌いながらこみ上げてくるんです。それが伝わるのか、客席で聴いていた人が、次の年には新しいメンバーに加わってきます。こうして、市民の第九がじわじわと浸透していくのではないでしょうか。

3. 清水文化センターでの最終公演

小学4年生から90歳まで、感謝の思いも込め
高らかに歌う2011年の歓喜の歌

 メンバーの構成は毎年違いますが、下は小学校の4年生から上は90歳くらいと幅広いです。最初は奥さんだけだったのがご主人も、子供さんも加わり、という家族もあります。横浜に引っ越ししたけれど、毎年この時期には奥さんの実家のある清水まで来てここに通うという方もいます。
 感慨深いことですが、第2回目から演奏会を続けてきた清水文化センターの大ホールが、今度の第21回「市民による歓喜の歌大演奏会」の後、取り壊しになります。2012年からは会場を移すことになるでしょう。私も元気なうちは続けたいと思っていますが、そろそろ指導の後継者育成をという話もしています。場所や指導者が変わっても、皆さん熱心ですから第九を歌う会はまだまだ続くでしょう。
 本番当日、私はテノール、山田先生はバスに入って皆さんと一緒に歌います。オーケストラの指揮者のタクトを見て、ここで出会えた素晴らしい仲間たちと共に歓喜の歌を歌い上げたいと思っています。

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ふれあい音楽運営委員会

静岡市清水文化会館 マリナート 


河村 愼太郎(かわむら・しんたろう)

- 略 歴 -

1991第1回「清水市民によるベートーヴェンの
第九大演奏会」清水市庁舎前
合唱団228名
1992 第2回清水市民文化センター大ホール
合唱団272名
1995第5回清水市民文化センター大ホール
合唱団196名
2000第10回清水市民文化センター大ホール
合唱団210名
2005第15回清水市民文化センター大ホール
合唱団231名
2010第20回清水市民文化センター大ホール
合唱団270名
2011第21回清水市民文化センター大ホール
2012第22回静岡市清水文化会館マリナート大ホール


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