» 富栄寿多(ふえすた)|ふじのくに ささえるチカラ

富栄寿多(ふえすた)

生活の中に根付く掛川祭の本物の余興
伝承ムードを祭り好きが作り出す


ふえすた

富栄寿多


小澤吉造 富栄寿多 事務局長 :左
小嶋勝利 富栄寿多 顧問 :右


取材日:2011.12.20

伝統ある掛川祭を価値ある形で後世につなぐ

 毎年10月第2週に開かれる掛川祭(かけがわまつり)は、一説には江戸時代中ごろからの歴史があるといわれる民衆の祭りである。4年に一度の大祭(おおまつり)と他の年の小祭(こまつり)からなる。祭りでは、掛川城下の42の町から「余興」と呼ばれる芸能の出し物と「屋台」(物を売る屋台ではなく山車のようなもの)が街に繰り出す。掛川祭の余興は、一般に広く使われているお遊び感覚の余興とは一線を画するものだ。町ごとに固有の余興に屋台と半被(はっぴ)があり、町民すべてが自信を持ってお披露目する行事だ。
 長唄、手踊り、獅子舞といった余興も、きらびやかな屋台も、掛川城下の人々は同じ地区の人の評価を意識して競い合ってきた。しかし最近は、他の地域にも誇れる貴重な文化であることが分かってきた。そこで、祭り好きの有志が結成していた「富栄寿多(ふえすた)」が祭りを一層誇らしくしようと動いている。
 大きなきっかけは2000年、リニューアルした掛川生涯学習センターのこけらおとしの行事「日本の響き」でのこと。全国の邦楽芸能を良く知る竹内明彦氏や、歌舞伎座で活躍する長唄師匠の杵屋勝彦氏が「掛川では生活の中に長唄が生き、伝えられている」などと絶賛した。地元の祭りは地域の資源なのだ、とみつめなおした。
 「子供の頃はいやいやながら余興を覚えさせられたもの」と語る富栄寿多事務局長の小澤吉造さんと顧問の小嶋勝利さん。しかし現在は地域独自の文化という自負がある。技術を向上させたいという意欲が生まれるムード作りを狙って、祭りの時期以外にも長唄のライブや鑑賞講座などを企画し、掛川祭の芸能への理解を深める。
 2012年は辰年、大祭の年である。10月に向けてすでに熱が入っている。





以下、インタビュー

1. 祭りの価値を知る

なんとなく演じても評価される余興のわざ
これはすごいことだと、皆に思ってほしい

小澤:長唄と手踊りはDNAに組み込まれているんじゃないかと思うほど掛川の町民にしみこんでいます。余興と言っても、祭りの出し物として基礎からしっかり覚えます。温泉街など地方に旅行に行って芸者さんの前で余興を少し披露すると「なんで踊れるの」って驚かれます。それでも町民自体はそれがすごいことだとは意識していなくて、祭りでも次第に派手な屋台を繰り出すことに気が向いて、演じることがちょっとないがしろになってきていたんです。あらためて余興に力を入れようと富栄寿多が動き出したんです。
小嶋:昔の旦那衆のなかには余興にはまってプロの道に進んじゃった人もいたくらいなんですが、私の世代あたりはなんとなくこなしていました。ところが杵屋の師匠方などプロから評価をいただくうちに、プライドがわいてきて、今は練習での気合の入り方が違います。子供たちも周囲から褒められてその気になってやるようになりました。

2. イベントによる側面支援

プロと同じ舞台に立ち町民文化の技術が向上する

小澤:文化庁の文化芸術振興費補助金事業の支援を受け、2011年9月に掛川生涯学習センター大ホールで「日本のひびき ふるさとの響き 掛川祭」というイベントを開催しました。子供から大人まで町の人々がプロの長唄演奏家と共演する晴れの舞台となりました。プロの本物の芸と接することで自分の芸にも磨きがかかります。先生もつられて体力を使い果たすくらい熱演してくれました。700人もの観客が来てくれて、アンケートでは、芸のレベルがすばらしかったと絶賛の嵐でした。




3. 街の活性化に向けて

歴史的建造物で鑑賞会やライブを開く
芸の質を高めて街に元気を取り戻したい

小嶋:子供たちが舞台で踊るのを見たお年寄りが感激して涙を流すんですよ。自分の子供の頃や、かつて賑わっていた掛川の街のことを思い出しているのでしょう。それを見たこちらも感激します。祭りになれば他の地域に就職した人や嫁いでいった人などが戻ってきます。誇りある芸で祭りを盛り上げて活気を取り戻し、人通りのある街に再生してくれればと願っています。
小澤:富栄寿多が企画して、年に2、3回、プロを呼んで祭りに馴染みの長唄のライブをしています。掛川城の竹の丸や大日本報徳社など、町の歴史的建造物を使わせてもらい、ムードはたっぷりです。邦楽にふさわしい舞台で本物の芸を見る機会を設けると市民の目も耳も肥えてきます。長唄鑑賞の前には「聞く前会」という事前の勉強会を開いて、演目への理解を深めます。若者も多数参加するようになったことは地元の文化への誇りが芽生えてきた証だと思います。

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掛川市街なか再生サロン

掛川市連雀1-14 <連絡先> TEL 0537-24-2223 (コジマカメラ:小嶋)


富栄寿多(ふえすた)

- 略歴 -

1980年ごろ、祭り好きが集まって富栄寿多を結成
2000掛川生涯学習センターのリニューアルオープンイベント「日本の響き」開催
2006掛川グランドホテルで邦楽ライブ開催
2007竹の丸で長唄鑑賞講座、大日本報徳社で長唄ライブなどを開催(以降、毎年開催)
2011掛川生涯学習センターで「日本のひびき ふるさとの響き 掛川祭」を開催


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