» 朝原 智子(あさはら・ともこ)|ふじのくに ささえるチカラ

朝原 智子(あさはら・ともこ)

海外で技能修得中に感じた生活文化の大切さ
蒲原の裂織を再興し、仲間とともに継承する


あさはら・ともこ

朝原 智子


NPO法人駿河裂織倶楽部 代表


取材日:2011.12.27

古布を裂いて織る、古き時代の生活の知恵

 使い古した服などの生地を裂き、その裂布を新しく織り込むことで衣料や生活用品として再生する技術、裂織(さきおり)。東北や北陸などで江戸時代から存在したことが確認されており、庵原郡蒲原町(現静岡市清水区)においても、貧しい時代の生活の知恵として残っていた。
 朝原智子さんは静岡県清水市(現清水区)出身で、結婚して蒲原町に移った。20代前半の頃、織や染めなどの伝統工芸を学ぶため海外各地へ留学した。裂織の素晴らしさに気づいたのはスウェーデンにいた時だ。素敵な家を見つけ、記念に写真を撮らせてもらおうとかけあうと、その家の人がお茶に招いてくれた。家の中に入るとそこは現地の技術によって織られた裂織の衣服や生活雑貨であふれており、まるで美術館にいるような錯覚を受けたという。故郷の裂織をあくまで使い古しと認識していた朝原さんは、暮らしのなかにあふれた裂織に感動し、生活文化として蒲原にも定着させようと考えた。その頃は裂織で作られたものや、織る人も織機もなくなりかけていたが、なんとかひとり続けている人を見つけ、残っていたものをもとに研究を重ねながら、裂織を再興すべく活動を始めた。
 1981年、有志の人たちとともに駿河裂織倶楽部を結成。2003年にはNPO法人として認可された。その翌年から国の登録有形文化財「お休み処」を拠点として、裂織や染めの体験教室を開いているほか、特別支援学校や小・中学校などへ無償の出張教室をしている。
過去に教えた生徒がふらっと立ち寄り「まだ織ってるよ」と言ってくれる場面が増えてきたと朝原さんは手ごたえを感じている。人々の生活に密着した文化を掘り起こし、仲間とともに伝承する意義を意識して活動を続ける。






以下、インタビュー

1. ヘムスロイド・アサハラ

手工芸に必要な数多の技術を習得し、
スウェーデンの伝統技能・フレミッシュ織を指導

 スウェーデンでは、織や染めなどの手工芸におけるいろいろな技術を習得した人に「ヘムスロイド」という称号を与えていて、わたしも留学中にいただいています。現地のフレミッシュ織という技法を用いての裂織にも、蒲原伝統の裂織にも、紅花染や草木染を使うので、とても勉強になりました。お休み処では両方指導しています。向こうの人たちは、資源豊かな国であるのに物をすごく大事にするんです。裂織が生活になじんでいるのもその国民性からではないでしょうか。その日常を目の当たりにしたとき、故郷でも生活文化として残したいという気持ちが芽生えました。
 蒲原に残っていた裂織は、他の土地のものと比べとてもやわらかかった。理由は温暖な気候や穏やかな潮風が吹くといった環境にあったようです。北欧のようにタペストリーやマットとしてだけでなく、衣類や装飾品にも十分適することがわかりました。蒲原にしかない裂織、それが駿河裂織です。

2. 駿河裂織倶楽部としての活動

旅人が足を休める旧東海道・お休み処でPR

 普段は倶楽部の方たちとお休み処で織や染めの作業をしています。お休み処は江戸時代の本陣前にあった旅籠和泉屋の建物をそのまま残している国の文化財で、当倶楽部が管理してきました。東海道を散策する方々が立ち寄っていかれるので、彼らの心も体も休まる場所となるよう今の名にしました。上野の森美術館など県外美術館での企画展示もありますが、主にここでの展示が駿河裂織を紹介する機会です。和の雰囲気にあふれた空間で和んでいただきながら、裂織に興味を抱いてほしいです。




3. 継承のために残る課題

学校へのボランティア指導などで育った人達が
裂織を続けていくための環境を整えたい

 私は全国裂織協会が主催する全国裂織展などにも参加し、積極的に国内外で発表してきました。メディアでも駿河裂織が取りあげられるようになり、おかげで北海道など遠方からお休み処を訪ねてくださる方も増えています。
 倶楽部としては特別支援学校などへ出張教室をやってきて、そのなかで裂織に興味を抱き、続けたいと言ってくださる人もいました。彼らが裂織を続けていける環境をなんとかして整えたい。お休み処を広く認知させることで、町が駿河裂織を地場産品として扱うようになれば、その道も開けてくるのではないかと感じます。
 昨今、新しい生地を裂いて織る芸術的志向の裂織も流行してきました。しかし生活文化といえるものは、ボロ布を再利用するという古い生活の知恵から生まれた裂織です。この生活文化と特有のやわらかさ、美しさをもった駿河裂織を絶やさないようにしたいです。

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NPO法人 駿河裂織倶楽部

静岡市清水区蒲原3-25-3(お休み処内) TEL 054-385-7111


朝原 智子(あさはら・ともこ)

- 活動実績 -

1981駿河裂織倶楽部を結成
1998静岡県文化財団より地域文化活動奨励賞受賞
2003NPO法人駿河裂織倶楽部設立
2004旧蒲原町お休み処の管理・運営開始
2005文部科学省「芸術による子供の居場所作り」において芸術文化伝導金賞受賞
2007エスパス服部日仏文化センターにて裂織展開催
フランス・パリにて裂織ファッションショー開催
2009日本橋千疋屋にて裂織展開催
2011第5回モナコ・日本芸術祭に参加


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