» 樂土舎・樂土の森プロジェクト(らくどしゃ・らくどのもりぷろじぇくと)|ふじのくに ささえるチカラ

樂土舎・樂土の森プロジェクト(らくどしゃ・らくどのもりぷろじぇくと)

出会いと偶然から生まれる新たな作品
自由な交流の中で、ものづくりする場を作る


らくどしゃ・らくどのもりぷろじぇくと

樂土舎・樂土の森プロジェクト


マツダ・イチロウ 樂土舎 代表


取材日:2012.1.9

土焼き、音楽、建築、農…様々な実験を試みる場

 袋井の法多山にほど近い場所に、風変わりな空間がある。土と木と石など自然素材でできたドーム状の茶室、石を組んだ舞台、鉄でできたオブジェ、やきものをする薪窯、大量に積まれた薪、果樹園が林の中に集まる。それが、樂土舎が手がけている樂土の森である。
 奇妙な風景が出来上がったのは、この地で様々な実験的取り組みを積み重ねているためだ。いろいろな人が訪れては、代表のマツダ・イチロウ氏らメンバーとともに集団でものづくりに没頭する。樂土舎のものづくりは、原始の時代、焚き火の際に土が固まってやきものができたような「もの」の根源を考えながら作る作業。やきものを作る行為は、まさに「土(つち)焼きプロジェクト」と名づけられている。ドーム状の茶室はいずれ土に還るものだけで構成してある。それらの制作には現代で完成した技術や手法は用いられていない。電気もガスも水道もない非日常で不思議な空間。不便ゆえにものごとの始まりに立ち返ることができる。
 ものづくりの場として存在しているものの、マツダ氏は「重要なのは結果より、ものづくりの過程」と考えている。自由に出入りする人々が、それぞれの立場でそれぞれの関わり方で参加する。作業ごとに、人の組み合わせも時間もやり方も様々で固定していない。その時々のめぐり合わせの偶然から生まれるものや事象を皆で受け入れようというのだ。舞台を作れば、今度はそこで演ずる人を呼び寄せる。それは演者と観客の一期一会の場づくり作業となり、過程そのものが作品になる。
 この場所に興味を持った人々のその時々の集まり。その中に濃密なつながりも、ゆるやかなつながりも生まれる。自由で多様性があるからこそものづくりを楽しむ場所として成長している。





以下、インタビュー

1. 土焼きプロジェクト

陶芸ではない、やきもの作りの中で
偶然から生み出される初源的なものを愛でる

 樂土の森には、みんなで作ったやきものの窯がありますが、私たちがそこで焼くのは陶芸ではありません。技術としての芸を求めない初源的な陶器を作る作業なので、単に「陶」と言っています。
 例えば、プロとして陶芸をしている人は窯焚きをする際、プロでも弟子でもない他人に火の番はさせないでしょう。しかし、私たちの土焼きプロジェクトは違います。そのとき都合のつく参加者から当番を決めて、1人6時間ずつ6日間に渡って火を入れるんです。早めに薪をくべる人もいれば、じっくり様子を見る人もいて、火の調整にも個性が出てきます。違う個性の組み合わせや順番、そのとき窯の中での置き場所の違いによって、偶然がもたらすやきものの変化を楽しもうとしているんです。その過程への関わり方は自由です。中には自分の作品を作らずに、火入れのみやりたいという人もいるくらいです。

2. アーティストと作るここだけの空間

観客も場づくりに参加するという気持ち

 建築プロジェクトとして作ったものの中には舞台があります。ここにしかない空間で本物のアーティストに、ここだからこそできることを演じてもらいます。2011年9月は、ジャズピアニスト山下洋輔氏と舞踊家田中泯氏がここで競演しました。これは裏方のスタッフ、観客も含めた、その時その場に集まった人たちが一つの場を作り出そうという試みであって、主客が区別された興行をしようという意図はまるでありません。演目が終れば、交流会で演者も観客もこの場の余韻を楽しみます。




3. 「樂土」の思い

土と土地を通して様々な体験を楽しむ
形を残すのではなく、活動の痕跡を残す

「樂土」という言葉には、安楽に暮らせる土地という意味や、風土や粘土、土焼きなど土そのものを楽しむ意味を込めています。ただ、私自身は最終的にここが無に帰るというイメージを浮かべているんです。土に還るもので作った空間ですから、将来、誰もいなくなれば朽ちてきます。朽ちて朽ちて廃墟化した姿を見た未来の人が「ここに何かがあったぞ」と思うような場面を想像すると面白い。そのために今、様々な痕跡が残るようなことを一生懸命やっているんです。
 ものと人とが作り出した場を固定した形で残そうと意識するのではなく、やることに意味づけしながら、ただ実行していくこと。そうやっていけば人が語り継いでいく。人に語られる存在として残ること、それは文化の姿と言ってもいいのではないでしょうか。ここは誰が来ても構わない場所ですが、ここだけで楽しむのではなく、ここで起きたことを外に発信していくことも大事だと思っています。

.


樂土舎・樂土の森

袋井市豊沢字南方 <連絡先> TEL 090-8860-4686 (マツダ)


樂土舎・樂土の森プロジェクト(らくどしゃ・らくどのもりぷろじぇくと)

略歴

1996樂土の森にブルーベリーを植栽 ドラム缶による薪窯「壱ノ窯」制作
1997メンバーによる工房・樂土舎の建設着手
1998古式穴窯「弐ノ窯」の基礎建設 工房・樂土舎の落成 音楽集団「もも」による落成記念公演
1999竹の内淳(現:竹之内淳志)の独舞公演など
2000弐ノ窯の完成。「游山窯」と命名 第1回土焼きプロジェクト(以降、毎年実施)
2001桃花村舞踊団の公演など
2002田中泯の独舞(以降、毎年開催)など
2003建築のプロジェクト「土の家―茶室―」開始
2004石ノ舞台の製作・完成 「樂土のお茶遊び」を開催(以降、数回開催)
2006「参ノ窯」初窯焚き 樂土の森音楽会開催 など
2008建築のプロジェクト「地下の舞台」製作開始
2010第24回地域文化活動賞(主催:財団法人静岡県文化財団)にて地域文化活動奨励賞受賞
2011『山下洋輔×田中泯「ピアノ×場踊り」』を主催 など


一覧に戻る(TOPへ)