» 遠州大念仏保存会(えんしゅうだいねんぶつほぞんかい)|ふじのくに ささえるチカラ

遠州大念仏保存会(えんしゅうだいねんぶつほぞんかい)

80年を超える保存会が守る遠州の郷土芸能
組ごとの伝承活動を見守り、融和につとめる


えんしゅうだいねんぶつほぞんかい

遠州大念仏保存会


平野文彦 遠州大念仏保存会 事務局長


取材日:2012.1.17

400年以上の歴史を持つ遠州大念仏を守る由緒ある保存会

 遠州大念仏は、まさに大念仏と呼ぶにふさわしい規模と歴史を持つ行事だ。毎年7月中旬のお盆の時期に30-40人もの人が集まり、初盆を迎えた家を訪れ、お囃子や踊りと共に念仏を詠唱する。それが浜松、磐田、袋井にまたがる地域のそこかしこで繰り広げられるのである。
 事の始めは、戦国時代。1572(元亀3)年の三方原の戦いで武田信玄に敗れた徳川家康は、奇策を練り、犀ヶ崖(さいががけ)で武田軍を崖下に落として一矢報いる。その後、たたりのような出来事が続いて武田兵士の怨念ではないかとうわさされるようになり、鎮魂のための念仏回向を始めたという。それが遠州一帯に広がったのだ。
 泰平の江戸時代になると、次第に派手になり、各組が競い合うようになる。過熱した組がいがみあって制限令が出されたり、集会を疎んじられる時代を経たりして衰退期を迎えた。そこで危機感を持った組頭たちが連合組織を結成、現在の遠州大念仏保存会の前身となった。大念仏が始まって400年以上、保存会は80年以上という連綿たる歴史を持つ。現在、保存会のもと13地域の65の組が活動する。
 芸能の伝承は各組がやり、保存会は修行にあたっての実施日や布施についてルールを決めるなど、秩序維持に努めた。芸能に誇りを持てるよう、写真を展示したり記念誌を発行したりもした。毎年7月15日には、犀ヶ崖のかたわらにある宗円堂(現:犀ヶ崖資料館)の前で念仏供養の踊りをする。10年おきには「遠州大念仏大競演」を開催する。そうした晴れの場に立ちたいという希望を聞き取って演ずる組を決めるのも保存会の役割だ。今や組どうしのいがみ合いはなくなっているが、歴史を積んだ保存会が率先して決め事を調整しているからこそ広い地域の融和が保たれている。





以下、インタビュー

1. 遠州の広域に残る文化

組それぞれが独自の演奏、踊りをする
地元の大切な風物として自主的に伝承

 大念仏というのは全国にありますが、これだけの数がまとまっているのは例がありません。地元遠州の大切な文化です。かつては浜松の中心部など沿岸の方の地域まで活発だったようですが、やんちゃが過ぎて時の政権の規制を受けて徐々に衰退し、取締りが緩やかだった北の農村地帯で生き残ってきました。だから、保存会に所属するのは、浜北区や、磐田市、袋井市の北の方の地域が中心です。
 双盤[そうばん:真鍮製の鉦(かね)を2つ向かい合わせにしたもの]、太鼓、笛といった鳴り物類は各組で大きな違いはないですが、装束や踊りは組ごとに違います。各組が競い合った時代に少しずつ独自性が生まれていったと思われます。ですから、それぞれの組が自分達の地域の風物として自主的に維持・保存し、保存会は主に組間の融和や支援活動を目的としています。

2. 保存会組織の運営と役割

窓口、取りまとめ役となってイベントを支援する

 保存会では会長をはじめとした事務方と、参加する各組の代表者が集まって決め事をします。毎年7月は宗円堂の前庭で「犀ヶ崖念仏と精霊送り」という恒例行事があります。かつては多くの組が訪れて念仏供養をした時代もあったようですが、周囲の交通規制のため長い時間はやれなくなり、今は2組に絞っています。組の希望を聞きながら、選定する作業を保存会がやっています。10年ごとに開催する遠州大念仏大競演でも、保存会が取りまとめ役として演目を決めています。




3. 対外的な活動

鎮魂のために訪れた東北の被災地
手を合わせる観客を見て感じたやりがい

 2011年8月に、磐田、天竜、浜北の商工会の声がけで慰問団を結成し、東日本大震災の被災地に出向いて、念仏供養をしてきました。同じように民俗芸能が残る東北地方の方々を励ましたいという思いからです。被災地では念仏を見る人々が手を合わせて感謝してくれました。犀ヶ崖で無念の死を遂げた人のための供養が、被災地の方々の供養にもつながっていると思います。今でも同行した関係者が集まると自然に「あのとき行って(少しでも心を安らげることができて)良かった」という会話になります。
 自分たち地域でも、親族の初盆で大念仏をやってもらった感謝の気持ちを持ち続けていて、それが遠州大念仏を後世に伝えていかなければという使命感になっています。最近は少子高齢化の影響もあって、担い手不足のため休会する組もありますが、これまでも休会したあと復活した例も少なからずありますので、保存会の活動を続けていくことが重要だと考えています。

.


犀ヶ崖資料館

浜松市中区鹿谷町25番10号 <連絡先> TEL 053-588-7462(平野)


遠州大念仏保存会(えんしゅうだいねんぶつほぞんかい)

略歴

1930遠州大念仏団(遠州大念仏保存会の前身)が結成される
1983犀ヶ崖の脇に建つ宗円堂が犀ヶ崖資料館となる
1990結成60周年記念「遠州大念仏大競演」を開催、記念誌を発行
2000結成70周年記念「遠州大念仏大競演」を開催
2010結成80周年記念「遠州大念仏大競演」を開催


一覧に戻る(TOPへ)